酵素

新規用途の開発

D-アミノ酸オキシダーゼの応用1)

アミノ酸には、「L体」と「D体」と呼ばれる光学異性体が存在します。体内に存在するアミノ酸のほとんどはL体ですが、近年数種のD体のアミノ酸(D-アミノ酸)がヒト等の哺乳類体内で発見され、神経伝達やホルモン分泌の制御などに関与すること、加齢に伴いD-アミノ酸が蓄積することが明らかになってきました。また、腎疾患やアルツハイマーの診断、食品の発酵管理や微生物汚染の指標としての利用も報告されています。D-アミノ酸の測定には、ブタ腎臓由来のD-アミノ酸オキシダーゼ(DAO)を利用することができますが、ブタ腎臓から抽出されるDAOは非常に高価です。当社では、「スリーパーベクター」により、DAOを大量生産することに成功しました。DAOはD-アミノ酸の測定の他に、抗生物質中間体やL-アミノ酸の製造等、幅広い応用が期待されています。

ヒスタミン測定2)

ヒスタミンは、アレルギー反応、胃酸分泌、血圧降下などに関与する生理活性物質です。マグロ、カツオ、サバ、イワシなどの赤身魚やその加工食品中に含まれ、アレルギー様の食中毒の原因となる場合があります。日本では、食品中のヒスタミンは法規制されていませんが、米国では水産物に対しヒスタミンの管理が義務付けられており、日本でも対米向け輸出水産物ではヒスタミンの管理が必要です。しかし、従来のHPLC法やAOAC法などの測定法は大型の分析装置が必要であり、ヒスタミンの迅速かつ簡便な測定法が強く求められています。

当社では、ヒスタミンのみに反応するヒスタミンデヒドロゲナーゼと呼ばれる酵素を見出し、図1のような原理でヒスタミンを定量測定できる「チェックカラーHistamine」を開発しました。ハンディタイプの測定器と組み合わせ、従来法と同等の信頼性の高い結果を得ることができます。今後、水産食品加工の現場から流通まで、幅広く利用されることが期待されます。

図1. ヒスタミンの測定原理

図1. ヒスタミンの測定原理

ルシフェラーゼの新たな応用

ルシフェリン再生酵素の発見3)

ルシフェラーゼによる発光の過程で、基質であるルシフェリンはオキシルシフェリンに変化します。ホタルでは、オキシルシフェリンがルシフェリンに再生され、再利用されると言われていましたが詳細は不明でした。当社では、オキシルシフェリンを中間体であるニトリル体へ変換する酵素「ルシフェリン再生酵素」を世界で初めて発見しました。さらにこの酵素の遺伝子をクローニングし、大腸菌で発現させることに成功しました。ルシフェリン再生酵素をルシフェラーゼの発光反応に組合わせることによって、発光の安定化や高感度化が達成できると期待されます(図2)。

図2. オキシルシフェリンの再生反応

図2. オキシルシフェリンの再生反応

アデニンヌクレオチド測定法の開発4)

生命活動においてATP(アデノシン三リン酸)はエネルギーとして消費され、ADP(アデノシン二リン酸)やAMP(アデノシン一リン酸)に分解されます。ATP、ADP、AMPは総称してアデニンヌクレオチドと呼ばれ、各々の量比から細胞の活性(元気さ)を推測することができると考えられています。当社では、ルシフェラーゼとPPDKに、ピルビン酸キナーゼを組み合わせたアデニンヌクレオチド分別定量試薬を開発しました(図3)。

図3. アデニンヌクレオチド測定の原理

AMP=2の発光量-1の発光量
ADP=3の発光量-2の発光量
ATP=1の発光量 のようにして計算する。

引用文献

1

Bakke, M. and Kajiyama, N.: Improvement in Thermal Stability and Substrate Binding of Pig Kidney D-Amino Acid Oxidase by Chemical Modification, Appl. Biochem. Biotechnol., 112, 123-131 (2004)

2

Sato, T. et al.: Simple and rapid determination of histamine in food using a new histamine dehydrogenase from Rhizobium sp., Anal. Biochem., 346 (2), 320-326 (2005)

3

Gomi, K. and Kajiyama, N.: Oxyluciferin, a Luminescence Product of Firefly Luciferase, Is Enzymatically Regenerated into Luciferin, J. Biol. Chem., 276, 36508-36513 (2001)

4

Ishii, S. et al.: A novel method for determination of ATP, ADP, and AMP contents of a single pancreatic islet before transplantation, Transplant. Proc., 36, 1191-1193 (2004)