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過去の展示

『食道楽』に学ぶ

料理法(1)
『食道楽』を読んで驚かされるのは、文中に登場する料理の種類の豊富さである。その数、和洋中の幅広い料理が実に六百数十種もあった。すべての料理について、食材の分量やレシピが書かれているわけではない。しかし実際に料理の手順が、食材の成分の見分け方にはじまり、食材の買い方、食材の栄養学的効能、季節ごとの食べ物、その調理法と盛り付け方、伝統料理の歴史的背景、単品料理から数十種の料理を揃えた上等料理などのほか、台所の道具や設備、害虫や毒物・有毒細菌の駆除法など、およそ食生活に関するありとあらゆる事柄が具体的にわかりやすく説明されている。
その料理の中心は家庭料理である。弦斎の『食道楽』以前にも料理本は出ているが、家庭料理のなかに新しい食材と新しい味を求め、それを広めようとして幅広い料理の知識をもとに日本料理や西洋料理のほか、中国料理まで採り上げている料理本は意外に少なく、『食道楽』は読者にとって目新しいものとなった。弦斎は『食道楽』の読者を通して、家庭の中に料理法の興味を広め、覚えさせたいと考えていたのである。
『台所日記 料理暦・明治38年』表紙
『台所日記 料理暦・明治38年』表紙
(神奈川近代文学館蔵)
「西洋料理調理法」村井弦斎直筆ノート
「西洋料理調理法」
村井弦斎直筆ノート
(神奈川近代文学館蔵)
イラスト
料理法(1)