ビデオ「ヨーロッパの食文化」シリーズ(全5巻)
黄金時代のフランス料理 ~エスコフィエと美食神話~
日本で明治開化なったばかりのころ、フランスは植民地政策が軌道にのり、バブルの時代を謳歌していた。時代が求めているものをするどく察知したホテル王リッツは、豪華ホテルを次々に着工。そこでの魅力を料理にかけた。彼の求めに応えた天才シェフ、エスコフィエによって料理の近代化はすすめられていく。おそらく食文化史上、華麗さでは空前絶後といえるベルエポックのフランス料理を再現しながら、その美食神話が世界をかけめぐった背景を検証する。
クリストフ・マルガンの伝統料理 ~現代フランス料理事情~
伝統的な秩序やモラルに対して若者達が抗議行動を起こした、1968年の通称「パリの五月」事件。やがてそれは社会の変革へと発展し、食の分野にも新たな潮流、ヌーヴェル・キュイジーヌをひきおこした。世界的な健康指向の中で大食や美食が避けられ、フランスの食文化の後退を嘆く声が聞かれた。しかし80年代に入るとクラシックへのゆり返しがはじまる。リヨンの若きシェフ、クリストフ・マルガンによる伝統と創造性に満ちたフランス料理。今一番熱いシェフの俎上を見る。
ペリゴールの秋のはなむけ ~貴腐ワイン、フォワグラ、トリュフ~
1977年、フランス世論研究所と食と旅の月刊誌「ゴ・ミョ」は、フランスのどの地方においしいものが沢山あるか、というアンケート調査を行った。もっとも多くの票を得たのが世界三大珍味の二つ、フォワグラとトリュフを産出するフランス南西部ペリゴール地方である。「質の良い食材、美食家、恵まれた自然条件、それにもまして生産者の想像力」とは、エスコフィエが百年前、「美し国」の条件を語った言葉。しかし今日、美し国の食材生産にはさまざまな問題がつきまとう。これを解決する生産者の想像力とは…。
主役はいつも大きなテーブル ~食卓画を読む~
1910年、夏目漱石は小説「門」の中で若夫婦のささやかな幸福の象徴として、ちゃぶ台を登場させた。それは日本の近代化の中で輸入された西洋のテーブルをたくみに文化翻訳したものである。と同時に、家族団欒の場が楽しい会話と正しい礼儀作法を大事にするようになったのも、このとき輸入された西洋の思想だった。西洋での家族団欒は宗教改革以降のこととされているが、このことを如実に語っているのが食卓画である。食卓の中心は何か。そこに誰がいるか。ポンペイのフレスコ画から十八世紀イギリスの家族の肖像画まで食卓の図像を読む。
木村尚三郎のシチリア食紀行 ~地中海式食事法~
1950年代、欧米で動物性脂肪の過度の摂取に原因する疾病が問題になった。そこで注目されはじめたのが地中海沿岸諸国の食事である。食物繊維の豊富なパスタ、オレイン酸や抗酸化物質を多量に含むオリーブオイル、青魚を中心とした魚介類、緑黄色野菜…。調理法はあくまでも素材を生かして自然。そして食卓は大勢集い楽しみつつおいしく食べあう。木村尚三郎氏は地中海式食事法の本家本元であるシチリアを訪れ、ヨーロッパの料理の流れが、千年昔の地中海に回帰している姿を検証し、これこそ「くらしといのち」が輝く二十一世紀の食事法だ、と総括する。