研究機関誌「FOOD CULTURE No.1」
映画『ヨーロッパの食文化』の制作はいよいよ佳境です
ー山崎博紹監督に聞くー

Q 子供の頃、映画館で観る目下製作中の予告は、本編にもましてワクワクした記憶があります。ヒッチコックの「裏窓」の予告では、監督自ら登場し「皆様お静かに!」と観客に注意を促すのです。いわゆる「ほこり静め」ですね。そこでそのツテで言えば「ア・ターブルー(ごはんですよ!)」。さて製作が佳境に入っていると聞きおよんでおります「ヨーロッパの食文化」の演出ブランとか、製作状況をお聞かせください。これは予告編です。
A ワクワクしていただけると嬉しいのですが、シリーズ「中国の食文化」「日本の食文化」を継承して、目下「ヨーロッパの食文化」全5巻の製作を進めています。すでに2巻完成しました。その第1巻は、おそらく人類の食文化史上華麗さでは空前絶後といえるフランス・ベルエポックの料理を、天才エスコフィエの料理哲学を通して検証した「黄金時代のフランス料理」。1850年代から1914年の第1次世界大戦前夜までのパリと南フランスが難台です。
Q 日本でいえば、明治維新から大正の初めまでのことですね。当時の日本は近代国家の体を整えることに躍起となっていました。
A 面白いことに開化なったばかりに竣工した築地ホテルのメニューがフランス料理なんです。すでにその頃からフランスの美食神話は世界中をかけめぐっていたのです。この神話を世界中にばらまいたのがエスコフィエ。19世紀半ば頃からフランスは殖産興業と植民地政策が軌道にのりバブルの時代を謳歌していました。バリの大改造が決行できたわけです。バリは視覚的な街に生まれ変わり、世界の金持ちたちを魅了します。仏戦争で経済は一時弊するもすぐに回復。経済復興を印象づけるための万国博が開催され、大統領主催の大晩餐会が催される。美食外交の始まりですね。この伝統は今日もエリゼ宮の食卓に生きています。この時代を背景にグランドホテルの支配人リッツとエスコフィエが登場します。リッツは時代の要求にかなった豪華ホテルを世界中に竣工し、そこでの魅力をフランス料理にかけます。エスコフィエは彼の求めに応じながら料理の近代化をすすめていく。映画ではエドワード7世やサラ・ベルナールが親しんだエスコフィエのメニューを再現しました。これは想像力を必要とする難事業でした。おそらく話題になるでしょう。
Q 第3巻は撮影が終わったばかりですね。さらに4巻、5巻はどのような構想なんですか。
A 第3巻では、ヌーヴェル・キュイジーヌ以後のポスト・モダンといわれているフランス料理にスポットをあてました。あれほど吹き荒れたヌーヴェル・キュイジーヌの嵐も、毀誉褒貶があって、このところ伝統料理回帰がいわれています。その舞台が、フランス食文化の情報発信の基地リヨン。この地で今注目の若いシェフ、クリストフ・マルガンに出会いました。彼にカメラを向けることによってフランス料理が今、何を目ざしているのかがわかってきたような気がします。そのあと第4巻はヨーロッパの食材にスポットをあてます。舞台はフランスのベリゴール。今食材がはらんでいるさまざまな問題が同時にうきぼりにされるでしょう。最終巻は、このところおいしくて健康に良いと注目のイタリア料理。南イタリアの庶民の日常の食事を味わっていただきましょう。2000年の初夏には全5巻完成の予定です。予告編風に言えば、近日公開、乞うご期待!
グランドホテル(パリ) 1862年竣工。
1900年、パリ万博におけるルーベ大統領の大晩餐会のメニューより。 牛フィレ・ベルビュー。
エスコフィエの料理より。
山うずらのココット焼き・ペリゴール風、
赤ちしゃのサラダ、
アーティーチョークの、パルメザンチーズ添え。

キッコーマンライブラリー
映画『ヨーロッパの食文化』(全5巻)
監督・脚本 山崎博紹
監修 木村尚三郎
企画 キッコーマン株式会社
キッコーマン国際食文化研究センター
2000年秋公開予定
KIKKOMAN Library,Motion Picture “Food Culture”(Volume1 to 5)