研究機関誌「FOOD CULTURE No.3」
Food Forum Event 2000 「米」と儀式:東アジアにおける主食としての米とハレの食事

第2回食文化フォーラム、ジャパン・ソサエティー(ニューヨーク)で開催

東アジアの文化に息づく米の様々なかたちを紹介

第2回目の食文化フォーラムが、2000年11月28日・12月2日の2日間、ニューヨークのジャパン・ソサエティーにおいて、「『米』と儀式」をテーマに開催されました。米は、日本そして東アジアにおいて非常に重要な穀物であると同時に、儀式や文化の中で特別な役割を果たす存在でもあります。食物としての米のさまざまな形を紹介するとともに、東アジアの文化における米の意味を探る魅力的なフォーラムとなりました。

日本の「食」の象徴・米

夕刻からのフォーラムとなった1日目では、「米の様々なかたち:SUSHI(すし)とその未来」をテーマに、すしを始め食物としての米の多様性が取り上げられました。
まず、ジャパン・ソサエティーのマイケル・ソバーン会長による歓迎の挨拶に続いて、キッコーマン茂木友三郎社長が開会の挨拶を述べ、「朝ごはん」「昼ごはん」「夕ごはん」といった言葉にも表れているように、ごはん(米)は朝・昼・晩と食べ、かつ一粒残さず食べる習慣である。つまり、日本の「食」の象徴であり、日本文化にとって非常に重要な存在であると語りました。さらに、米と日本のしょうゆは密接なつながりをもつという話も紹介されました。
続いて、「Seduction of Rice(米の誘惑)」等の共著もある、ジャーナリストで食文化研究家・写真家のナオミ・デュギッド、ジェフリー・アルフォード夫妻が、数々の美しいスライドを使って、日本の食文化と世界の米づくりを紹介しました。興味深いエピソードを交えてのお話は、すしの原型である「熟(な)れ鮓(ずし)」、稲荷信仰と結びついた稲荷ずしから、餅、菓子など米から作られる様々な食品に及び、会場からも熱心な質問が寄せられました。講演後の、すしをメインとした日本料理のレセプションも大盛況で、たくさんの方々が伝統的なすしや「フュージョンずし」を実際に味わったほか、日本の食生活において米と切り離すことのできないしょうゆのテイスティングも楽しんでいました。

アジアの文化との深いかかわり

2日目のテーマは「アジアの文化をつくる穀物:米」ということで、祝祭や儀式の場で米が果たす、単なる食物を超えた役割がテーマとなりました。「米のある風景」と題したスライドのプレゼンテーションに幕を開け、午前・午後の2部にわたってパネルディスカッションが行われました。
文化人類学、宗教学、食文化など各分野からパネリストを迎え、日本、中国、ベトナムなどアジア各国における儀式や慣習の中の米文化について、貴重な発表とディスカッションが続きました。日本での神饌(しんせん)や稲荷信仰、ベトナムや中国の儀式における米など多彩な内容に、アジアの文化を形成する米の重要性が浮き彫りになりました。日本から特に講師として招かれた、大手前大学学長の米山俊直氏は、「米の文化」と題し、米は主食や酒、せんべいなどの食品としてだけでなく、刈り取ったあとに得られる藁や灰なども生活の道具や建築にリサイクルされるものであり、日本人の生活に深く結びついていることを説明しました。さらに、稲作に必要な雨乞いの儀式、雨止めの儀式など、日本各地に残るユニークな儀式の紹介に、聴衆は興味深く聞き入っていました。また、エントランスホールホワイエに展示されたおせち料理やお供えを前に、講演者のひとりである食文化研究家の安藤エリザベス氏がおせち料理についての特別講演を行いました。
この日の昼食には、アジアの米の魅力を満喫してもらえるようにとベトナム料理やすしなどが用意されました。日本のお正月にちなんだ餅つきのデモンストレーションも好評でした。
2日間のフォーラムは、充実した成果を挙げて幕を閉じました。キッコーマン国際食文化研究センターは、今後もこのような活動の発展につとめ、日本と世界の食の「フュージョン(融合)」など、新しい視点による研究をさらに進めていきます。

開会の挨拶を述べる茂木友三郎(キッコーマン社長)
ナオミ・デュギッド氏、ジェフリー・アルフォード氏のスライドによる講演
パネルディスカッション(12月2日午前の部)写真左よりジェフリー・アルフォード氏、ナオミ・デュギッド氏、米山俊直氏、ニコル・ローシア氏、C.B.タン氏
パネルディスカッション(1 2月2日午後の部)写真左よりシャルロッテ・アンダーソン氏、ゴーラヅド・ビハール氏、カレン・スマイヤーズ氏、ニール・アビエリ氏、安藤エリザベス氏
レセプション風景
しょうゆのテイスティング
餅つきのデモンストレーション

Rice & Rituals: Essential Foods and Festival Fare in East Asia
「米」と儀式:東アジアにおける主食としての米とハレの食事

主催:ジャパン・ソサエティー
協賛:キッコーマン国際食文化研究センター

2000年11月28日(火)

The Way of Rice: Sushi & Beyond
米の様々なかたち:SUSHI(すし)とその未来

  • 歓迎挨拶 マイケル・ソバーン(ジャパン・ソサエティー会長)
  • 開会挨拶 茂木友三郎(キッコーマン株式会社社長)
  • スライドによる講演
    The Way of Rice : Sushi & Beyond
    ナオミ・デュギッド/ジェフリー・アルフォード(ジャーナリスト・食文化研究家・写真家)
  • レセプション/さまざまなすしと日本料理の試食としょうゆのテイスティング

2000年12月2日(土)

Rice in Asia : The Grain that Shapes Culture
アジアの文化をつくる穀物:米

午前の部

    • 挨拶 ジョン・ウィーラー(ジャパン・ソサエティー副理事)
    • パネルディスカッション
      「米のある風景」
      ナオミ・デュギット/ジェフリー・アルフォード(ジャーナリスト・食文化研究家・写真家)

      「日本の米の文化」
      米山俊直(大手前大学学長)

      「中国文化における米」
      C.B.タン (香港中華大学人類学部部長)

      「ベトナムにおける米文化と料理」
      ニコル・ローシア(『シェフ・クックブック』著者)

午後の部

  • パネルディスカッション
    「神饌しんせん:日本における供え物」
    シャルロッテ・アンダーソン(人類学者・著作家)/ゴーラヅド・ビハール(美術史研究家・写真家)

    「伏見稲荷神社での稲荷信仰」
    カレン・スマイヤーズ(ウェルジアン大学宗教学教授)

    「日本の食膳における米」
    安藤エリザベス(ジャーナリスト・食文化研究家)

    「白、緑、黄、赤 中国系ベトナム人の儀式における米」
    ニール・アビエリ(ヘブライ大学人類学教授)
  • レセプション/餅つきのデモンストレーション

写真:Gregory Cherin