キッコーマン食文化講座
色々なしょうゆ ~地方による違い、海外のしょうゆ、しょうゆではないしょうゆ~
日程 | 2010年9月27日 |
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場所 | 野田本社 |
講師 | 田上秀男先生 |
主催 | キッコーマン国際食文化研究センター |
- 1しょうゆの地域性については、消費量の8割以上を占める「こいくちしょうゆ」は関東地方で生まれたが、現在では、日本全国で使用されている。また、海外で日本のしょうゆとして使用されているしょうゆもほとんどがこいくちしょうゆである。発祥地である関東では砂糖類などはあまり加えられないが、全国的には甘いしょうゆが多い。特に、九州地区、中でも南九州は甘いしょうゆが好まれ、いずれも砂糖類を加えて甘くしたものである。
- 2うすくちしょうゆは関西地方で生まれ、特徴として色がうすく、煮物、吸い物などの料理に使用される。現在では、主産地は関西地方であるが、全国規模で生産・消費される。
- 3さいしこみしょうゆは山口県で生まれ、しろしょうゆは愛知県で生まれた。たまりしょうゆは最も古いしょうゆであるが、現在では、主に東海地方で生産され消費されている。
- 4関東地方では出汁の原料としてかつお節が愛用され、一方、関西地方では昆布が愛用される。
歴史的に見て、かつお節はカツオが黒潮に乗って太平洋沿岸を北上するルートで発展し、昆布は北海道から北前船により越前経由で京・大阪に運ばれたことによる。前者が江戸の食文化を後者が京の食文化を支え、発展させたと言える。昆布は大阪から鹿児島を経て沖縄に渡り、その食文化に大きな影響を及ぼしたのは興味深い。 - 5味の嗜好性についての境界線はフォッサ・マグナ(糸魚川・静岡構造線)とおおよそ一致する事例が多いとされるのも面白い。
- 6しょうゆの地域特性をみるには郷土料理を比較するのが面白い。
- 7減塩しょうゆは長く健康増進法による「特別用途食品」であったが、平成21年4月に同じ健康増進法の栄養表示基準の適用を受けることとなった。「低塩しょうゆ」、「うす塩しょうゆ」などの仲間入りとなったが、食塩濃度の規定が100グラム中9グラム以下はそのままであるので注意が必要である。
- 8店頭にしょうゆと名のつく商品は多いが、その多くは「しょうゆ加工品」であり、これはしょうゆをベースにした液体調味料である。「用途別」と「特徴ある原料の使用」の2つに大きく分類できる。
前者には最近話題の「たまごかけしょうゆ」があり、後者には「昆布しょうゆ」などがある。
そら豆を原料として麹をつくり発酵・熟成させたしょうゆに似た液体調味料が開発された。これは「しょうゆ風調味料」に分類される。 - 9アジアには、日本のたまりしょうゆに似た作り方のしょうゆがある。中国のしょうゆ生産量は数百万キロリットルと推計されているが、その大半は「低塩固体発酵法」によるもので日本のこいくちしょうゆとはその品質において大きく異なる。
- 10魚醤油は日本にも秋田県の「しょっつる」などいくつか存在するが、ベトナム、タイなど東南アジアがその本場である。
- 11牛乳や卵白を利用したしょうゆ風調味料の開発はなされている。
- 12中国には、生きた化石と言われるカブトガニの魚醤がある。