キッコーマン食文化講座

みりんができるまで ~製造方法と用具~

日程 2010年11月29日
場所 野田本社
講師 川根正教先生
主催 キッコーマン国際食文化研究センター

第2回では、本みりんの伝統的な製造方法について、映像を見ながら理解します。また、流山市立博物館には千葉県指定有形民俗文化財である「みりん醸造用具一式」が所蔵されていますので、これらの醸造用具を紹介し、その使用方法などを考えてみます。

みりんは糯米、米麹(粳米)、焼酎、この3つが主原料となります。糯米は、粳米に比べてデンプンが老化しにくく、米麹の作用で糖化されやすいことから、掛米として使用します。麹は糸状菌を穀物に繁殖させたもので、東南アジア・中国・日本などで醸造物の製造に利用され、温度25~28度、湿度60~75%の麹室で作ります(麹蓋法)。みりん醸造では、麹の良し悪しが品質を左右するため、「一麹、二仕込み、三熟成」と言われています。

糯米、米麹、焼酎を仕込み、これを醪といい、糖化・熟成工程で化学反応が進み、糖・アミノ酸などが生成されます。麹中の酵素アミラーゼはデンプンに作用して、みりんの甘み成分であるブドウ糖などを生成し、麹中の酵素プロテアーゼはタンパク質に作用して、みりんの旨味成分であるアミノ酸を生成します。この他に、香味成分も生成されます。

糖化・熟成後、醪を圧搾してみりん原液とみりん粕(こぼれ梅)になり、みりん原液は、未分解のデンプンなどを沈降させる滓下げと、ろ過の工程を経て、容器に詰めて製品となります。

明治11(1878)年に書かれた「味淋醸造法」によると、「一焼酎拾石、一白糯米拾四石、一糀白米四石弐斗、合弐拾八石弐斗、此諸味廿壱石九斗七升、此清味淋十六石九斗弐升、改十四石三斗八升弐合」とあり、仕込桶1本で約14石(2520リットル)のみりんが造られます。

さらに、同文書の「右製造法」によって具体的な製造法をみると、「大桶へ焼酎を入れておく。白米を洗い、一夜水に漬けておき、翌日蒸して室に入れ、3日後に糀となる。白糯米を洗い、水に漬けて翌日蒸し、莚140枚に広げて冷まして糀と合わせる。大桶へ入れ、櫂で掻き回し、7日目ごとに掻き回して2か月で甘みがでる。舩で絞って別の桶に入れ、14日経つと濁りが沈澱し、白みりんができる。白みりんに九年酒を2斗程入れれば、色付きみりん、すなわち赤みりんとなる。みりん醸造は四季を問わないが、春・秋を好しとし、春は3月、秋は9月に製造する。春は50日くらい、夏は40日くらい、秋は50日くらい、冬は70日くらいでできる」と書かれています。

みりん粕は上方では「こぼれ梅」と呼ばれ、お菓子の一種として食べられていますが、名称の由来は、「ほぐしたみりん粕は、満開の梅がこぼれたように見えること」「みりん粕が乾燥してパサパサになった状態が、梅の花に似ていることから名付けられた」ようです。