キッコーマン食文化講座

大豆の歴史 ~大豆の起源と伝搬について~

日程 2012年9月28日
場所 野田本社
講師 大島秀隆先生
主催 キッコーマン国際食文化研究センター

植物の種子は悪条件を乗り切るための姿です。子孫を残すための条件が整ったときに、芽を出し成長します。大豆も種子の一つ。その生命力はとても強く、種皮が剥けたり種子に傷が付いてもしっかり成長します。現在の大豆はツルマメが起源種で、中国の黄河流域から発生したと考えられています。

人類は紀元前6000年ごろからツルマメを栽培していたと考えられています。日本では縄文時代(BC4000年ごろ)には栽培種のツルマメ(現在の大豆に近い)を食していた痕跡が長崎県の大野原(おおのばる)遺跡や熊本県の三万田(みまんた)遺跡から出土した縄文土器に残っていました。弥生時代(BC200年ごろ)の宮原遺跡(山口県)、井場遺跡、滝川遺跡(静岡県)でも大豆が出土しています。西暦100年ごろの阿玉台遺跡(千葉県)、矢崎遺跡(群馬県)でも大豆が出土しました。時代とともに九州から本州に伝わっていったと考えられます。

日本では仏教の伝来(538年)と共に大豆の加工技術、加工品も伝来しました。大豆は貴重なたんぱく源であり、古事記(712年)にも五穀の一つとして登場しています。大宝律令には大豆を原料とした「醬」を管理する役所の記載があり、927年に発刊された「延喜式」には醤の配合も記載されています。

ヨーロッパには1600年代、アメリカへは1700年代になって中国や日本から持ち込まれました。ヨーロッパや北米では今日でも大豆を食べる習慣はアジア諸国ほどではありませんが、今ではアメリカは世界一の大豆生産量となっています。

アメリカでは当初、食用としてではなく飼料として利用されていました。1900年代の始めごろになって大豆の栄養価に気付き食用とする動きが出てきました。痩せた土地でも栽培が可能で栄養価の高い植物、それが大豆です。アメリカ南部では今でも綿花と大豆、北部ではトウモロコシと大豆の輪作が行われています。
1999年にはアメリカ食品医薬品局(FDA)から大豆たんぱく質の摂取は健康維持に効果あり、と発表され、アメリカでは大豆加工食品(豆乳、豆腐、湯葉など)を食べるようになりました。

最近では動物性たんぱく質だけでなく、植物性たんぱく質の重要性が世界的に広まっていて、植物性たんぱく源として大豆が利用・加工される様になっています。牛肉に比べて栽培コストが低い大豆はこれからの食料不足を解決する食物と考えられています。