きき酒と器 ~きき酒のポイントと器との関連性~
日程 | 2013年8月29日 |
---|---|
場所 | 野田本社 |
講師 | 永井則吉先生 |
主催 | キッコーマン国際食文化研究センター |
きき酒とは?
「きく」ということは、一般的には「音を聞く」だが、日本古来の大和言葉では、「香りをかぐ」「味をみる」という意味などで使用 →注意深く、耳・鼻・舌を利かせて物を調べるという意味
- なぜきき酒をするのか?
-
全ては、コミュニケーションのため →お酒をどう表現し、情報を共有できるかが問題
- 製造のため(製造関係) →製造・品質管理のため
- 品質管理のため(開発関係) →商品の特徴を明らかにするため
- 販売のため(流通、飲食店関係) →買付、販売のため、品質管理のため
- 楽しむため(お客様・消費者) →買うため
きき酒の準備
- お酒の温度
通常10~15℃ 目的に応じて温度設定をする。
- ポイント
一定に保ちやすい温度、感覚疲労が起こりにくい温度、飲食する時の温度
⇒冷酒10~15℃、お燗 40~50℃
- 容器
一般的にきき猪口を使用。時にはワイングラスなど。嗜好形なら実際の場面想定に近いもの。
さまざまなきき酒の効果
- 期待効果
先入観によって評価が左右される。 例:包装、表示によるもの
- 後光効果
関係の無い良い特性が、他の評価にプラスの影響を与える 例:フルーティな香りさえあれば、酒が良い。
- 練習効果
繰り返すことで、感度を上げることができる。そして今までわからなかったこと・品質の差などを感じられる。きき酒能力の向上がおこる。
- きき酒のポイント
-
- 1同じ温度帯、器を使用する。
- 2言葉で認識できないものは理解できない。→言葉と特徴を一致することで理解できるようになる。
- 3再現性がないと科学でない。
- 4嗅細胞は30日程度で全て入れ替わる。
きき酒の実践
- 視覚
きき猪口の場合は白磁の部分で、着色程度を観察。蛇の目模様は、清澄度を観察。
色調→清澄度→着色度
- 嗅覚
容器をそっと鼻に近付けて「上立ち香」をみる →少量5ml程度を口に含む
→空気をすすった後に、香りを鼻に抜いて口中の香り「含み香」をみる
- 味覚
-
舌の上の味覚(甘味、酸味、苦味)を把握 →口当たり(なめらかさ、きめ)を確認
→吐き出し後、もしくは飲み込んだ後のキレや余韻を確認☆温度による味覚の変化を確認
甘味:温度が高いと強く感じる。
酸味:温度が高いと強く感じる。
塩味:温度が低いと強く感じる。
- 甘辛の判定⇒3つの要素
-
- 1水の硬度(口に含んだ瞬間):硬水だと辛口に感じやすい。
- 2酸度(口中):酸度が高いと辛口に感じやすい。
- 3日本酒度(喉越し):日本酒度がプラス程、辛口に感じやすい。
器との関連性
通常飲むときは、ワイングラスがおすすめ。
ワイングラスの形状はなぜ柄が付いているのか?
⇒顎を持ち上げ、ダイレクトに舌の上にお酒を流し込む形状になっている。
薫酒タイプ(大吟醸、吟醸系)に合う酒器
- 香りの高い吟醸系の日本酒には、口が広く上に広がったラッパ型の酒器が最適。グラスに注がれた日本酒の香りを逃さず堪能することができる。
爽酒タイプ(普通酒、本醸造、生酒系)に合う酒器
- 淡麗辛口テイストな爽酒タイプの日本酒には、飲みきりサイズの小さな酒器がオススメ。温度の変わらないうちにクイッといけるものが良い。形は出来れば細身でラッパ型のものの方が香りを的確に捉えることできる。
熟酒タイプ(古酒、長期熟成酒)に合う酒器
- 熟酒タイプの日本酒には、重厚感のある美しい色調の酒器がオススメです。漆塗りの酒器など落ち着いた柄のものを選ぶと雰囲気が出てる。形状は、個性的で濃密な香りを包み込めるように口が大きく、すぼまっているものを選ぶと良い。
醇酒タイプ(純米酒、生酛系)に合う酒器
- 醇酒タイプは最も日本酒らしさを持った、米の味をダイレクトに味わえるタイプの日本酒なので出来れば和風な酒器が好ましい。形状は口径より下に膨らみを持たせた形がベスト。ふくよかな香りを包み込み、引き立てくれる。
酒器選びのポイント
お好みの質感、形状、デザイン、色合いの酒器を見つける。できれば3種類以上ぐらい
一つのお酒をその異なる器に注ぎ、相性を確認
温度帯を変えて酒器の選択を広げる