日本ワイン最前線 ~今、日本でワインをつくることとは~
日程 | 2024年2月4日 |
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場所 | キッコーマン株式会社東京本社 KCCホール |
講師 | フード&ワインジャーナリスト 鹿取 みゆき氏 マンズワイン株式会社 小諸ワイナリー 栽培・醸造責任者 西畑 徹平 |
主催 | キッコーマン国際食文化研究センター |
1.ワインと日本ワイン(鹿取)
■ぶどうとワイン
ワインとは、水分豊富で果皮が柔らかいぶどうを原料に、発酵によってつくられる酒である。
原料が輸送には不向きであったため、その土地の食文化と共に発展してきたと考えられる。
原料となるぶどうには、色・香り・糖分・酸味・渋味など様々な要素が含まれており、
それらはすべてワインに反映される。つまり、どのようなぶどうを使っているかが、
ワインにとっては最も重要な要素となる。
■日本ワインとその評価
日本ワインとは、「国産ぶどうのみを原料とし、日本国内で製造された果実酒」のことをいう。一方、
輸入果汁を使用していても、国内でつくられたワインは国内製造ワインと呼ばれる。
近年、日本ワインは、海外からも注目され、様々な国際ワインコンクールで数多くの賞を獲得している。なかでも、2023年のヴィナリ国際ワインコンクールで、
マンズワインの「ソラリス 千曲川 信濃リースリング クリオ・エクストラクション 2021」が甘口部門の最高得点賞を獲得したことは特筆に値する。
フランス醸造技術者協会が主催し、ワインの醸造家が審査員を務めるという、権威あるコンクールにおいて、マンズワインが独自に開発した日本の固有品種である
「信濃リースリング」というぶどう品種でつくった日本ワインが部門トップを受賞したことは、快挙中の快挙であると感じる。
2.つくり手の視点 ~マンズワイン小諸ワイナリー~(西畑)
マンズワインは山梨県勝沼市と長野県小諸市にワイナリーを持っている。
小諸ワイナリーでつくっているのは、「ソラリス」というマンズワインのフラッグシップワインである。
小諸ワイナリーは、小諸市と上田市に畑を持っているが、自社管理畑が約12haあり、
その中でも約40%は有機栽培でぶどう栽培をおこなっている。
私たちの栽培のポイントは、良いぶどうをつくることである。ワインとはぶどうがすべてであり、
良いぶどうをつくることこそ、ワインづくりのすべてだと考えている。ゆえに栽培方法にはこだわりを持っており、その1つが「マンズ・レインカット栽培法」だ。これは、ぶどうの垣根をビニールで覆って
雨が当たらないようにし、樹全体を守る手法。
もう1つは「収量制限」で、1本の枝になる房の量を減らすことにより、残したぶどうに味を凝縮させる
手法である。ただし、あまり人の手を加えすぎることなく、ぶどうに寄り添った管理を心がけている。
*******<セッションパート>日本ワインの未来(鹿取、西畑)*******
~日本ワインと海外ワイン~
(鹿取)日本ワインへの注目が高まっているが、要因はなにか?
(西畑)品質が世界に接近してきたことだと感じるし、客観的にもそういう評価をいただけるようになってきた。また、円安によって価格も近づいてきている。
~抱える課題~
(鹿取)耕作放棄地の増加や農家の高齢化に関して、どう考えているか?
(西畑)放棄地が増えていることは実感する。農家の高齢化は世界的な問題でもある。
放棄地や栽培困難となったワイナリー周辺の土地の一部を当社で引き受けることもある。
(鹿取)実際に栽培をしていて、気候変動・地球温暖化の影響を感じるか?
(西畑)影響は感じる。酸度が落ちやすくなり、逆に糖度は以前より上がりやすくなった。
(鹿取)日本では、EUで有機農法向けに認可されている薬剤でも不認可のものがあるが、これに関してはどう考えているか?
(西畑)私たちが積極的に有機栽培に取り組むことによって、有機栽培や有機認証をめぐる問題を掘り起こし、改善につなげていきたい。
また一方、使える農薬が限られている現状に対応することによって、個々の栽培者たちがレベルアップを目指すことができる側面もあると考えている。
~日本でワインをつくることとは~
(鹿取)課題は山積しているなかで、なぜ日本でワインをつくるのか?
(西畑)「日本でどんなワインができるのか」「日本でつくったぶどうで世界と勝負をできるのか」ということが大変興味深いことである。
日本ワインは発展途上であり、未知数であることも面白い。
(鹿取)地域という視点で、ワイナリーのある小諸市への想いを聞きたい。
(西畑)当社だけでなく、いろいろなワイナリーがそれぞれのワインづくりをすることによって、小諸市という場所が「ワインの産地」に
進化していけるのではないかと思っている。
(鹿取)日本ワインはアグリ・ツーリズムとも親和性があり、その土地でつくられたワインをきっかけにコミュニティが広がっていく可能性があると考えている。
課題を解決しながら、今後もさらに発展していけると信じている。