発酵のチカラVOL.2 ~日本の国菌、麹菌~
日程 | 2024年3月16日 |
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場所 | キッコーマン株式会社東京本社 KCCホール |
講師 | 東京農業大学名誉教授 舘 博氏 |
主催 | キッコーマン国際食文化研究センター |
我々の先人達は、夏暑くてジメジメする梅雨がありカビが生える気候風土を逆手にとって、麹菌というカビで食品を造る技術を発展させた。「麹を使用して、我国の伝統的な発酵食品を製造すること」を醸造と言うが、日本の醸造物には、清酒、焼酎、みりん、醤油、味噌、食酢などがある。「日本からの麹菌の科学技術と文化の発信は、21 世紀の世界に大きなインパクトを与えるものと期待される。(一島英治)」として、2006年10月12日、日本醸造学会は麹菌を国菌に認定した。醸造に用いる麹菌は、アフラトキシン非生産の安全なカビである。
日本を代表する醸造酒に清酒があるが、その生産量は令和3年では40万kℓと、最も生産量が多かった昭和48年の177万kℓに対して、23%に減っている。清酒は三段仕込みによる並行複発酵と高濃度仕込みにより、醸造酒でありながらアルコール20%にもなる世界に誇る酒である。日本を代表する蒸留酒に焼酎があるが、連続式蒸留焼酎と単式蒸留焼酎がある。焼酎製造には主に白麹菌が用いられてきたが、現在では酒質のバラエティーを出す為に黒麹菌や黄麹菌も用いられている。
食酢の原料はエタノールで、好気性菌である酢酸菌により酢酸が生成される。酢酸発酵は、空気を送り込むことにより短時間で発酵が終了する。壷酢は、カメに蒸米、米麹、水を仕込み、カメに生息している酵母がアルコール発酵し、カメに生息している酢酸菌が酢酸発酵する特殊な食酢である。
みりんは多くの成分を含んでいることと、アルコールを含むお酒であることから、特有の調理効果が生まれて来る。みりんの調理効果としては、上品な甘味、テリ&ツヤ、煮崩れ防止、深いコク&旨み、味がしみこむ、消臭の6つが知られている。
演者らは麹菌が新規アミノペプチダーゼであるジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)を生成していることを見出し、本酵素が醤油醸造におけるアミノ酸生成に極めて重要な働きをしていることを明らかにした。これまで、本酵素を用いたヒト2型糖尿病予防にかかわる食品中のDPP4阻害ペプチドの探索について研究を行ってきた。納豆が高いDPP4阻害活性を示し、50%阻害濃度(IC50)も6.35~7.1㎎/mℓと食品としては比較的高い値を示すことを見出し、納豆のDPP4阻害ペプチドは、Lys-LeuとLeu-Argであることを明らかにした。 日本人にとって、日本の発酵食品を使う和食が健康に良いと考えている。