収蔵品企画展
キッコーマンの広告史Ⅱ~PURE AND NATURAL , 1968-1984年~

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キッコーマン国際食文化研究センターでは、1960年代から1980年代のキッコーマンの広告に焦点を当てた収蔵品企画展を行います。1960年代は食の安全に関わる事件が続けて発生し、人々の関心が高まった時代でした。これに対してキッコーマンが示した方向性、それが “PURE AND NATURAL(ピュア アンド ナチュラル / P&N)”「純粋なもの・自然なものをお届けするキッコーマン」だったのです。
人々の意識・暮らしにいちじるしい変化があったこの時代に、キッコーマンが制作した広告を俯瞰しながら、ブランド戦略の変遷をたどります。

開催期間:2025年7月29日(火)~10月3日(金)
                  10:00~12:00、13:00~16:00(平日のみ)

og2_shuzohinkikaku_koukokushi2 人間が人間らしく生きるために ~身近なものを、見つめなおそう~

食の安全への関心が高まる中、1969年に、キッコーマンは “PURE AND NATURAL”「純粋なもの・自然なものをお届けするキッコーマン」という方向性を世の中に発表します。“PURE AND NATURAL” を軸に、これまでの広告とは一線を画す、社会情勢や時代背景に焦点をあてた広告を展開しました。



1969年 新聞広告
身近な存在のしょうゆ。その価値の再認識を狙った
1969年 雑誌広告
しょうゆは香りの調味料。本醸造でつくるしょうゆの香り、その深さをテーマにした
1970年 新聞広告
時代背景を踏まえ、社会が求める情報を訴求した
1970年 新聞広告
「オナカをいやすお料理から、ココロをいやすお料理へ」

og2_shuzohinkikaku_koukokushi2 ピュア アンド ナチュラル宣言 「純粋なもの・自然なものをお届けするキッコーマン」

「純粋なもの・自然なものをお届けするキッコーマン」キッコーマンが行ったこの宣言は、時代に先駆けたものでした。
この宣言は、「お客様が求める、純粋で自然な食をお届けする」という想いを込めて、<PURE AND NATURAL>シリーズとして発展します。
このシリーズは旬の味をおいしく食べるために大切な材料の選び方の情報と、しょうゆの選び方の情報を合わせて、お客様に訴えたものでした。



1971年 雑誌広告
P&N(PURE AND NATURAL)を軸に、旬の素材としょうゆの選び方の情報を訴求した
1971年 雑誌広告
「もう一度、見つめよう。純粋とは?自然とは?」
1972年 雑誌広告
しょうゆは純粋・自然なものであるということ、万能調味料として世界中の料理に合うことを訴求した
1973年 雑誌広告
栄養バランスを考慮したレシピに、キッコーマンしょうゆを添える方法をお伝えしている

og2_shuzohinkikaku_koukokushi2 <対話のある広告><母と娘の対話>シリーズ

1969年4月、キッコーマンは消費者との対話をテーマにした大規模なキャンペーンを行います。“もっともっとしょうゆを生かすお料理をご存知の奥さま。こういう料理に、こういう使い方でとハガキに書いてキッコーマンにお知らせください” という呼びかけを行い、集まったアイデアを広告化したのです。メーカーからの一方通行の情報発信ではなく、消費者参加のかたちを取り入れて、広告を生きた生活情報の交流の場にしました。

また、1972年には“母から娘へ、娘から母へ。母と娘の対話を大切に…キッコーマンの今年の提案です”にはじまる<母と娘の対話>シリーズを展開します。
母と娘という世代の異なるふたりのお母さんの心の対話を通じて、いま、忘れかけているものへの再発見を呼びかけました。
このシリーズでも “母から娘へ伝えたい…娘から母へ教えたい…そんなお料理のアイデアを送ってください” という消費者への呼びかけを行い、この呼びかけに寄せられた料理のアイデアは、約9万通におよびました。



1972年 新聞広告
母の時代のつけもの、娘の時代のサラダをテーマに描かれている
1972年 新聞広告
たけのこをテーマにした母と娘の対話広告
1972年 新聞広告
母と娘の世代感覚の違いを切り取っている
1972年 新聞広告
母と娘の「古くてよい経験、新しくてよい冒険」を描いている

og2_shuzohinkikaku_koukokushi2 <「お腹」をいやすお料理から「心」をいやすお料理へ ><食事の時間を大切に>シリーズ

<母と娘の対話>シリーズを受けて、新しい食生活への提案は、料理の心、食事への心づかいへと発展していきます。
“お料理がたんに空腹をいやすものであったら、それはさびしいことです。お料理とは、私たち人間の心をいやす、大切な愛情の表現であって欲しいのです。食べ、語り、笑い、なにかがぶつかり、なにかが結ばれる。そんなお料理をつくりましょう”
これは1973年<「お腹」をいやすお料理から「心」をいやすお料理へ>シリーズのコピーです。料理の心と、料理への心づかいの再発見を喚起しています。

その後、人々の目は、より豊かな生活の質と内容に向けられはじめ、わが家での生活を大切にする 「家がえり」 の現象が目立って増えていきます。
家族そろって食事を楽しむことはもちろん、お客様をわが家に招いたり、招かれたり、家族ぐるみのつきあいが増えたこともこの時代の特徴です。
この時期に発表した広告が、1974年の<食事の時間を大切に>シリーズでした。
“ゆっくり時間をかけて、お話をして…時間と話題と演出のある食事。それだけのことで、今の時代の暮らしがどれだけヒューマンになることでしょう”
このコピーに表されているように、このシリーズは、食卓を楽しい心の交流の場とすることへのひとつの提案でした。



1973年 新聞広告
<「お腹」をいやすお料理から「心」をいやすお料理へ>シリーズ
1973年 新聞広告
心の通いあいをテーマとしている
1974年 新聞広告
<食事の時間を大切に>シリーズ
1974年 新聞広告
食卓を楽しい心の交流の場とする提案を行った


キッコーマン奥さま大学 ~刺激のマーケティングから学びのマーケティングへ~

1970年代は、学びの時代でもありました。それは家庭で主婦業をいとなむ方も例外ではなく、余暇に自分の生きがいとなり得る学習を望む方が大変多かったと言います。「キッコーマン奥さま大学」は、このような方々を対象に、北海道から九州まで日本全国を13ブロックに分け、計113回にわたり開催しました。その最終参加人数は約25,000人でした。講演内容は、「豊かな食生活」に関するテーマはもちろん、歌・画・体操など参加性に富んだものになるように工夫し、また食品材料事典・料理用語事典などのテキストの頒布、奥さま大学修了証の交付なども行い、参加の楽しさを学びに結びつけて展開しました。講演会のほかにも分科会や料理講習会、商品テスト、座談会などが行われ、好評を博しました。



1970年 新聞広告
当時のアイ・キャッチャー
「野田キッコ」を起用し、宣伝
1971年 新聞広告
「怠話(たいわ)から対話(たいわ)へ」
当センター配架図書
奥さま大学で頒布されたテキスト


味の言葉・味な言葉 ~懐かしさと、新鮮さ~

日本に古くから伝わるものの中に、「ことわざ」があります。その中には、魚や野菜、料理に関するものが少なくありません。
この言葉を拾い集めて雑誌広告のシリーズにしたのが、1979年から5年間にわたって掲載された「味の言葉・味な言葉」シリーズです。
昔はあたりまえだったことわざも、時代とともに忘れられていきます。
味にまつわる言葉と、その中に秘められた昔からの生活の知恵や教えを、印象的なイラストとともに広告にしたシリーズです。



1980年 雑誌広告
うまい話が重なってやってくることを表したことわざ
1981年 雑誌広告
ときガラシをつくる際に、辛みを残すコツが込められた言葉
1982年 雑誌広告
「油断大敵」を表すことわざ
1984年 雑誌広告
言葉遊びをしながら、肉・にんにく・キッコーマンしょうゆの相性の良さを訴えている