しょうゆと郷土料理
成分分析によるしょうゆの地域別特徴
成分分析によるしょうゆの地域別特徴
各地域において消費されているしょうゆの特色を調査するため、地域ごとのしょうゆ売れ筋商品リストを作成。興味深い傾向が見られた。「食塩濃度」「糖濃度グリチルリチン濃度」「レブリン酸濃度」「しょうゆの醸造香(HEMF)」「グルタミン酸核酸濃度」の5つの分類において分析した結果を以下にまとめた。
塩味 食塩濃度
首都圏、関東外郭で使われるしょうゆは食塩濃度が高く、塩味の強いしょうゆが好まれていることが分かる。それに対して北海道では昆布しょうゆなどのだししょうゆが好まれる傾向にあり、また近畿では減塩しょうゆが上位に含まれていたため、平均食塩濃度が低くなっている。九州では全体的に食塩濃度が低めのしょうゆが多い。
甘味 グルコース換算値
しょうゆに含まれる主な単糖類および二糖のシュークロースと、甘草の有効成分であるグリチルリチンの濃度を測定し、その濃度をグルコースの甘味に換算した総量を比較。その結果、九州で使用され、しょうゆは他の地域に比べ圧倒的に甘味が強く、二番目以降の地域に二倍近い値を示した。続いて中国、四国のしょうゆの甘味が強く、反対に東北、関東外郭、首都圏、中京は甘味が弱い傾向にあった。
アミノ酸液 レブリン酸濃度
レブリン酸は糖が塩酸分解されたときに生成される物質であるが、醸造しょうゆには含まれないため、アミノ酸液が含まれているかどうか調べるときに分析する成分として知られている。レブリン酸量から北陸、東北、中国、九州のしょうゆはアミノ酸液の含まれる混合醸造しょうゆや混合しょうゆが使用されていることが分かる。
しょうゆ醸造香 HEMF濃度
レブリン酸が含まれるしょうゆが好まれる北陸、東北、中国、九州では、アミノ酸液が含まれるため、醸造しょうゆの割合が少なくなる。そのため代表的な醸造香であるHEMFが低い傾向に。北海道は、だししょうゆの類が多いため、醸造しょうゆの混合割合は少なくなっていると考えられる。関東外郭、首都圏、中京、近畿で使用されているしょうゆではHEMF濃度が高く、醸造しょうゆが好まれていることが分かる。
旨味 核酸濃度・グルタミン酸濃度からの旨味換算
グルタミン酸ナトリウムと核酸は相乗的に旨味を強める。北陸、中国、四国、九州などで使われるしょうゆは、グルタミン酸ナトリウムと核酸がバランス良く使われ、強い旨味を感じるしょうゆが多いのに対し、首都圏、関東外郭、中京、近畿のしょうゆは核酸を使用しているしょうゆが少ない。
北海道 だししょうゆの影響で塩分は少なめ、旨味が強い。醸造香は最も弱い。
北陸 塩分は高いが、旨味が強く、関東よりは甘味も強い方である。
東北 塩分が高く甘味が弱いが、アミノ酸液が含まれるため旨味は弱くはない。
関東外郭 塩分が高く、甘味が弱い、醸造しょうゆが主流。
首都圏 塩分が高く、甘味が弱い、醸造しょうゆが主流。
中京 甘味と旨味は弱く、アミノ酸液も使用していないため、関東外郭、首都圏に近い。
近畿 甘味と旨味は弱く、アミノ酸液も使用していないが、塩味は多様性が認められる。
四国 旨味が強く、甘味も強めであるが、アミノ酸液は含まず、塩分も少なくない。
中国 甘味が強いが、旨味が最も強く、醸造香が弱く、アミノ酸液を含む。
九州 甘味が最も強く旨味も強いが、塩分が少なめで、アミノ酸液を含む。