しょうゆと郷土料理
官能評価によるしょうゆの地域別特徴
官能評価によるしょうゆの地域別特徴
日本各地のしょうゆは、香りや味の特徴により8つに分類された。また、それらの使われ方により、日本は3つに区分された。
[ 方法 ]
10地域(北海道、東北、北陸、関東外郭、首都圏、中京、近畿、中国、四国、九州)より、しょうゆのマーケットシェアを参考に上位5製品を選定した。また、上位5製品のシェア合計が40%以下の地域(北陸、中国、九州)については、シェア合計が40%になることを目安に最大5製品を追加し、のべ62製品を評価対象とした。
評価は、13用語(アルコール臭、すーっとした香り、沢庵漬けのにおい、昆布の香り、鰹節の香り、沢庵漬け風味、昆布風味、鰹節風味、まろやかさ、塩味、旨味、甘味、べたつき)について各製品の強度を数値化した(評点法:9段階尺度)。なお、パネルは嗅覚、味覚の感度、およびしょうゆに対する感度を基準に一般消費者の中から25~58歳の女性50名を選抜した。
[ 結果 ]
日本各地のしょうゆは、香りや味の特徴により、“塩味が強い”タイプ(下図青丸)と“昆布風味、まろやかさ及び旨味が強く、塩味が弱い”タイプ(下図赤丸)の2つに大きく分かれることが分かった。さらに前者は、“刺激的な香りが強い”、“沢庵漬けのにおいが強い”、“前者以外の特徴を持たない”という3つに分類された。後者は、“鰹節の香りが強い”、“沢庵漬け風味が強い”、“鰹節風味、べたつきが弱い”、“昆布の香りが強い”、“後者以外の特徴を持たない”という5つに分類された。
また、しょうゆの使われ方により、日本の10地域は①塩味が強いしょうゆのみを使用する地域(東北、関東外郭、中京)、②塩味が強いしょうゆを主に使用し、その他のしょうゆも使用する地域(北陸、首都圏、近畿、四国)、③塩味が強いしょうゆ以外を主に使用する地域(北海道、中国、九州)の3つに区分された。
[ 考察 ]
ほとんどの地域は塩味が強いしょうゆが中心に使われるが、北海道、中国、九州では塩味が強いしょうゆ以外のしょうゆが中心に使われることが示された。さらに、それら3地域ではそれぞれ品質の異なるしょうゆが使われることが分かった。今後、それらの地域における歴史や風土、料理などを研究することにより、何故そのようなしょうゆ文化が形成されたのかを明らかにしたい。
また、気候の違いや流通の問題などにより、同一地域内であっても、食文化に違いがあることが報告されている。食文化の違いはしょうゆの好みにも影響している可能性がある。今回の研究では、日本を10地域に分類したが、今後エリアの分け方を検討することにより、詳細な地域性を明らかにしたい。