生物多様性

生物多様性は自然環境を支える重要な役割を果たしており、生物多様性が生み出す生態系サービス(資源の供給、気候の緩和、文化的な価値、水循環など)は私たちの生活に欠かすことはできません。その一方で、世界中で生物多様性の損失が急速に進行しており、懸念される状況になっています。

キッコーマングループは、生物多様性を中心とした自然資本への影響や自然関連リスクの把握に努めます。また、生物多様性保全に向けた活動を推進します。こうした取り組みにより、自社の事業活動の生物多様性へのプラスの影響がマイナスの影響を上回るようにし、2030年までに2020年の状態を超えて自然が回復する「ネイチャーポジティブ」の実現への貢献をめざしてまいります。

TNFD提言にもとづく開示

キッコーマングループは、気候変動とともに生物多様性は最も重要な社会課題であると認識しています。生物多様性保全に取り組むことは、経営理念はもとより環境理念における「自然のいとなみを尊重し環境と調和のとれた企業活動」を実践することになります。当社グループの事業は、大豆・小麦・水などの資源をはじめ地球の恵みによって成り立っていますので、それらの取り組みは事業基盤を支える重要な要素であると考えています。
そこで、自然資本や生物多様性に関する国際的タスクフォースであるTNFDに賛同し、TNFDフレームワークに基づいたリスクや機会を評価し、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標について開示をすすめていきます。

ガバナンス

自然資本のガバナンス体制
当社グループは、CEOが委員長を務めるサステナビリティ委員会を設置しています。サステナビリティ委員会では、全社的な取り組み方針を定め、自然資本を含むリスクや機会の把握とそれらへの対応を実施しています。
サプライチェーン全体の人権尊重
当社グループはグローバル企業の一員として、サプライチェーン全体を通して人権尊重に取り組んでいます。

戦略

LEAPアプローチ※にもとづき、影響・依存およびリスク・機会を評価し、主な対応策を検討しました。

  • LEAPアプローチ:TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)が推奨する、企業が自然関連のリスクと機会を評価・開示するための4段階のプロセス(「Locate(発見)」「Evaluate(診断)」「Assess(評価)」「Prepare(準備)」)
評価のスコーピング
LEAPの評価範囲を選定するにあたり、キッコーマングループのバリューチェーンを図示し、自然資本との関係性が大きいと想定される調達/仕入、生産を中心に検討することとしました。(LEAPアプローチにおいては、調達/仕入(農業)、生産(加工)として評価)
  • 赤字:LEAP評価範囲
  • Locate:自然との接点の発見

    セクターごとの自然関連の依存・影響評価ツールENCORE※を用いて、キッコーマングループのバリューチェーンが関連するセクターにおける自然資本への影響・依存を初期的に調査しました。

    • ENCORE:国連環境計画 世界自然保全モニタリングセンターなどが開発した、企業活動の自然への依存と影響を評価し自然関連リスクや機会を特定するグローバルツール

    調達/仕入(農業)、生産(加工)についてのENCOREによる分析は2022年に実施しており、Consumer Staples Sector※1で、Sub-industry※2としてAgricultural Products※3、Packaged Foods and Meat※4を選定して評価しました。(Evaluateのプロセスにおいて2025年時点のENCORE評価を反映)

    1. ※1Consumer Staples Sector:生活必需品
    2. ※2Sub-industry:サブ産業
    3. ※3Agricultural Products:農産
    4. ※4Packaged Foods and Meat:包装食品と肉
  • Evaluate:依存と影響の診断

    ENCOREによる影響・依存評価をベースに、調達/仕入(農業)および生産(加工)について、キッコーマングループのバリューチェーンにあてはめて影響・依存を精査しました。なお、精査にあたっては、2025年版のENCOREも適宜参照しました。評価結果は、以下のとおりです。

    Evaluate(診断)影響
    自然資本への影響について、調達/仕入においては、水利用や陸域・淡水生態系利用や水・土壌汚染などが大きく、生産においては、水利用などが大きいことがわかりました。
    Evaluate(診断)依存
    自然資本への依存について、調達/仕入においては、地下水・表層水や土壌質・土壌維持などが大きく、生産においては、地下水・表層水や水質・水流調整などが大きいことがわかりました。
  • Assess:リスクと機会の評価

    調達/仕入(農業)、生産(加工)の影響、依存それぞれについて、High以上と評価された項目について、移行リスク(政策/市場/技術/評判/賠償責任)、物理リスク(急性/慢性)、企業パフォーマンスの機会(市場/資本フローと資金調達/資源効率/製品とサービス/評判資本)、持続可能パフォーマンスの機会(自然資源の持続可能な利用/生態系の保護、復元、再生)について網羅的に整理し、重要リスク、機会を特定しました。調達/仕入(農業)については、移行リスクとして、水利用や土地利用への規制やそれに伴う市場の反応や評判、物理リスクとして、米やトマト生産地域の灌漑用水減少による収量低減や洪水などの自然災害による農作物の被害があります。
    生産(加工)については、移行リスクとして、水利用の制限とそれに伴う市場の反応や評判があり、物理リスクとして、地下水や河川の枯渇、水質・水流機能低下による調達困難があります。

  • Prepare:対応し報告するための準備

    Assessで特定した、調達/仕入(農業)、生産(加工)の重要リスク・機会への主な対応策について、SBTN※1のAR3T※2フレームワークで網羅的に整理したうえで、優先度の高いものを以下のように特定しました。

    1. ※1SBTN:企業や都市が自然環境に関する科学的根拠に基づいた目標を設定するための国際的な協働ネットワーク
    2. ※2AR3Tフレームワーク:企業が自然関連目標(SBTs for Nature)を達成するための行動指針であり、目標達成に向けた企業行動を優先順位付けして整理するアクションフレームワーク(回避>削減>回復・再生の順)

リスクと影響の管理

当社グループでは、事業の安定的な発展を実現し、ステークホルダーへの責任を果たすため、当社グループの活動を取り巻くリスクに備えた取り組みをすすめています。また、キッコーマングループが多数の事業をグローバルに展開していることを踏まえ、さまざまに異なるリスクと機会を把握・管理するため、担当する子会社および部門を各執行役員が指揮し、リスク顕在化の未然防止に努めています。

指標と目標

TNFDのグローバル中核開示指標
  • 自然関連の依存とインパクトに関するTNFD のグローバル中核開示指標に関する現状
  • 自然関連のリスクと機会とに関するTNFD のグローバル中核開示指標に関する現状
長期環境ビジョン
当社グループは、2030年に向けた環境ビジョン「キッコーマングループ 長期環境ビジョン」を策定しています。持続可能な社会の実現に向けて、長期的に取り組む分野、テーマ、目標を定め、自然資本を含むグループの環境活動を継続して強化しています。

2025年10月更新