官能評価

世界ではじめての、しょうゆの「フレーバーホイール」を発表しました。

フレーバーホイールとは

「フレーバーホイール」とは、ある食品から感じられる香りや味の特徴を、類似性や専門性を考慮して円状かつ層状に並べたものです。その食品を味わう人たちが香りや味について共通認識をもち、コミュニケーションを行うためのツールとして用いられています。
ビールやウイスキー、ワインなどでも、生産・流通・販売関係者や消費者が、共通の言語で品質を評価したり、料理との相性を語るために、「フレーバーホイール」を積極的に使っています。

日本と海外、2つのフレーバーホイール

一言にしょうゆといっても、様々な種類や品質があり、用いるしょうゆによって料理の仕上がりが大きく異なります。これまでは、しょうゆの品質の違いを説明する際に、それぞれの人が異なる表現を用いることが多く、必要な情報が十分に伝わらないことがありました。そこで、様々な人がしょうゆの香りや味を共通の言語を用いて表現できるようにするために、官能評価手法の1つであるQDA法※1を用いて、さまざまなしょうゆの特徴を明らかにしました。
昔から日本各地で使用されているしょうゆや近年人気を博している生しょうゆ※2など、138銘柄の評価を行い、91種類の特徴を見出し、日本のしょうゆの「フレーバーホイール」を作成しました(図1)1) 2)。また、アメリカ、中国、フランスなど、世界中から集めたしょうゆ149銘柄から88種類の特徴を見出し、世界のしょうゆの特徴を反映したしょうゆの「フレーバーホイール」も作成しました(図2)1)

図1.日本のしょうゆのフレーバーホイール
図1.日本のしょうゆのフレーバーホイール
図2.世界のしょうゆのフレーバーホイール
図2.世界のしょうゆのフレーバーホイール

「フレーバーホイール」と食事

相性の良い食べ物や飲み物を組み合わせることをフードペアリングと言い、似た特徴をもつ組み合わせは相性が良いと考えられています。つまり、しょうゆの「フレーバーホイール」を使用してしょうゆの特徴を把握し、似た特徴をもつ食材や料理と組み合わせることで、食事をよりおいしく楽しむことができるのです。例えば、「鉄のにおい」が特徴的なしょうゆは、鰹のたたきなど赤身の刺身との相性が良いと考えられます。また、「ハーブのにおい」や「油のにおい」が特徴的なしょうゆは、ステーキとの相性が良いと考えられます。ご家庭にあるしょうゆの香りをかいで、食材や料理との相性を想像してみてください。

キッコーマンの海外での本格的な事業展開から半世紀余りが過ぎたいま、しょうゆは世界100カ国以上で親しまれています。世界共通のコミュニケーションツールの一つとしてしょうゆの「フレーバーホイール」を活用し、しょうゆの魅力を伝えていきます。

  1. ※1QDA法:官能評価 QDA法
  2. ※2生しょうゆ:通常のしょうゆ製造で行う火入れをしていないしょうゆのこと。火入れとは、加熱して微生物を取り除く工程のこと。生しょうゆでは火入れの代わりにろ過により微生物を取り除いている。
引用文献
  1. 1M. Imamura: J. Sens. Stud. 31, 393-407 (2016)
  2. 2今村 美穂、片山 弘: 日本食品科学工学会誌 64(7), 343-354 (2017)