主な取り組み
環境マネジメントの推進
ISO14001認証取得
キッコーマングループは、環境マネジメントを推進するにあたり、ISO14001国際規格を効果的なツールと考え、1997年5月にキッコーマン野田プラント(現:キッコーマン食品野田工場)で、日本の食品業界最初のケースとして、ISO14001の認証を取得しました。その後、「2005年度までに主要事業所で認証を取得すること」を目標にして作業を進め、2006年2月の近畿支社の認証取得をもって目標を達成しました。

ISO14001一括認証取得審査
「クロージングミーティング」(2011年5月)

キッコーマングループISO14001認証書
2011年6月には、キッコーマングループの国内主要事業所を対象とするISO14001の一括認証を取得し、環境マネジメント推進体制のより一層の強化を図りました。
さらに、2015年9月にISO14001の国際規格自体が大幅に改定されたことに伴い、キッコーマングループでは、運用している環境マネジメントシステム(EMS)を新しい国際規格(ISO14001:2015)に適合するものに改定するとともに、新しい国際規格に則った内部環境監査が実施できる監査員の養成などを推進し、2017年6月には新しい国際規格での一括認証を再取得しました。
【表】キッコーマングループにおけるISO14001認証取得の歴史
取得年 | 事業所名 |
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1997年 |
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1998年 |
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1999年 |
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2000年 |
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2001年 |
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2002年 |
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2003年 |
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2004年 |
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2005年 |
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2006年 |
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2011年 |
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2013年 |
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2015年 |
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2017年 |
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2018年 |
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環境監査の実施
国内外のISO14001認証取得事業所については、定期的に、資格を持つ社員で構成されたチームによる内部環境監査と、外部の認証推奨団体によるISO14001認証更新・維持審査を受けるとともに、監査・審査結果の水平展開などを通して事業所間での情報の共有化を進め、さらなる環境マネジメントのレベル向上を図っています。

ISO14001認証維持審査
(2018年4月 キッコーマンフードテック西日本工場)

ISO14001認証維持審査
(2019年4月 キッコーマン東京本社)
また、国内の事業所(工場など)については、キッコーマン環境部員が赴き、現場管理者や担当者との情報交換や環境関連施設を視察する「事業所訪問」も行っています。
「事業所訪問」では、現場の稼働状況、各事業所(工場など)での省エネ・CO₂削減計画の進捗や環境関連法規への対応、環境ヒヤリハットの運用(後記)などの説明を聞き、得られた情報を解析して問題点を洗い出し、対策を提案するとともに、より効率的な省エネ・CO₂削減計画の立案を手助けします。

事業所訪問での情報交換会
(2019年11月 北海道キッコーマン)

事業所訪問での情報交換会
(2019年12月 キッコーマンバイオケミファ鴨川プラント)

事業所訪問での排水処理施設視察
(2019年11月 キッコーマンフードテック本社工場)

事業所訪問での醸造棟視察
(2019年12月 マンズワイン勝沼ワイナリー)
キッコーマン環境部は、毎年海外3地域(アメリカ、ヨーロッパ、アジア)のうちの1地域を選び、地域内にあるキッコーマングループの生産拠点の巡視や環境関連施設の視察、従業員への環境教育を行っています。
2018年度 アジア地域 (上半期) |
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2018年度 ヨーロッパ地域 (下半期) |
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2019年度 アメリカ地域 |
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2022年度 北米・南米地域 |
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JFC INTERNATIONAL (EUROPE) GmbH(JFCEU)従業員に対する環境教育(2018年度)

昆山統万微生物科技有限公司(KPKI)従業員に対する環境教育(2018年度)

海外企業の従業員に対する環境教育
(2019年9月 KFI(アメリカ))

海外企業の従業員に対する環境教育
(2019年9月 CLL(アメリカ))

海外企業の従業員に対する環境教育
(2022年9月 KDB(ブラジル))

海外企業の従業員に対する環境教育
(2022年9月 KFI(アメリカ))
ISO14001の実践
キッコーマングループでは、会社、事業所、環境関連施設(排水処理・廃棄物保管施設など)の管理者、ISO14001事務局担当者などの間で情報交換会を定期的に開催することで円滑な交流を図るとともに、各種環境情報(法令の発効・改定、他の事業所でのISO14001の運用状況、環境関連施設の稼働状況や問題点、公害防止・環境保全に関するノウハウや新技術など)の共有化を推進しています。

内部監査
(2019年12月 キッコーマン高砂工場)

環境ヒヤリハット報告書
たとえば、キッコーマングループがISO14001の一括認証を取得したのを機に、翌2012年度から始めた「クロス内部監査」や「環境ヒヤリハット報告」も、そのひとつです。
「クロス内部監査」は、各事業所がISO14001の規格に基づいて実施している内部環境監査に、他の事業所の内部監査員が参加するという監査制度で、各事業所間でのシステムのレベル合わせ、内部監査員ひとりひとりの力量と監査業務の質の向上、担当者間コミュニケーションの緊密化を目的としています。
また、「環境ヒヤリハット報告」は、企業活動の中に潜んでいる、環境汚染などに結びつく危険性のある事象――それゆえに、心理的にヒヤリとしたり、ハッとしたりした経験(環境ヒヤリハット)――が事業所で発生した場合に、報告を義務付けるシステムです。「環境ヒヤリハット」が発生した事業所では、事象発生原因を調査し、再発防止策を検討したうえで、報告書をとりまとめます。そして、これらの報告書が各事業所に配布されることにより、情報の共有化と、環境汚染などの事前抑止力の向上が図られています。
社員への環境教育
1)新入社員研修

キッコーマン新入社員研修
(2018年4月 キッコーマン野田本社)

キッコーマン新入社員研修
(2022年4月 キッコーマン野田本社)
キッコーマン環境部は、定期入社の新人に対して、環境問題の重要性認識、基本的知識の習得を目指した研修を毎年行っています。2022年度も、4月に新入社員に対して研修を行い、環境を巡る地球規模の問題を指摘し、キッコーマングループの環境ビジョン、実行されている施策、そしてその成果を説明しました。
2)環境講演会
キッコーマングループでは、2015年から毎年、社外の有識者をお招きし、環境講演会を開催しています(2015年:C.W.ニコル氏、2016年:養老孟司氏、2017年:岸由二氏、2018年:南利幸氏)。

河口真理子氏講演会
(2019年10月 キッコーマン東京本社およびキッコーマン野田本社)

2019年10月、キッコーマン東京本社(東京都港区)およびキッコーマン野田本社(千葉県野田市)において、河口真理子氏を講師に招き、環境講演会「これからの『おいしい記憶』を考える」を開催しました。
河口真理子氏は、株式会社大和総研・調査本部の研究主幹。一橋大学大学院修士課程で環境経済を学ばれ、環境経営・CSR・ESG投資、エシカル消費などサステナビリティ全般が御専門。アナリスト協会検定会員、早稲田大学非常勤講師、国連グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン理事、NPO法人・日本サステナブル投資フォーラム共同代表理事、エシカル推進協議会理事、公益財団法人プラン・ジャパン評議員、サステナビリティ日本フォーラム評議委員、WWFジャパン理事、環境省中央環境審議会臨時委員、経済産業省家電リサイクルにかかわる審議会、東京都キャップ&トレード委員会委員などを務めておられます。(講演当時)
河口氏は、キッコーマングループのコーポレートスローガン「おいしい記憶をつくりたい。(seasoning your life)」になぞらえて「これからの『おいしい記憶』を考える」と題した約1時間半の講演において、「人間の活動は地球の環境容量を超え、生物学的(気候変動問題、砂漠化、水資源・資源の枯渇、生物多様性喪失、海洋生態系の劣化)に、また社会的(貧富の差の拡大、難民・移民問題、奴隷・児童労働、テロ・サイバーテロ)にも、その持続可能性に疑問符が付き、見直しを迫られている。問題に対する危機意識を持ち、バックキャスティング思考(目標とする未来を起点に、今何をすべきかを考える未来起点の発想法)で我々の世界を『変革』する事が必要だ。それは、『大きな機会の時』でもある。パリ協定やSDGsなどの世界的な取り組みは、これまでの『経済ファースト』から『地球・社会ファースト』へのパラダイムシフトを目指した活動だ。金融は、これまでの経済主体の行動を規定する価値基準を変える重要な役割を担うだろう」と指摘されました。
講演会に参加した社員からは、「環境問題に対する意識が高まりました。SDGsへの理解も深まりました」「キッコーマンのビジョンを考慮したテーマで良かった。声も通り、分かりやすかった」「現在の環境がいかに危機的な状況かを再認識し、自分にも何ができるか考えるきっかけになった」「ISO14001事務局をやっているので、環境経営に対する意識が高まった」「今回は特に、IRの仕事で投資家と接しているので、一層興味深く聞きました」「環境問題への向き合い方を変えようと思った。環境への配慮と経済的な成長が両立できていない現状は残念です。同じベクトルにするための努力が、ささやかなことでもいいから、出来るようになればと思う」などの感想が寄せられました。
後日、講演内容と、河口氏来社時に開催したキッコーマングループCEOとの特別対談を掲載した冊子を社内配布し、当日は参加できなかった社員にも、河口氏の講演内容を紹介し、自然について考える機会を設けました。

冊子「『豊かな自然を考える講演会』記録 河口真理子氏をお迎えして これからの『おいしい記憶』を考える」
3)環境表彰
キッコーマングループは、2018年度に「環境表彰」制度を新設しました。
これは、キッコーマングループの中期環境方針達成に向けて、グループ企業の事業所や個人が行う、環境負荷の低減への取り組みや、自然共生・循環型社会の実現に向けた取り組みの中から、優れた活動を選び、それぞれの長所を全社で共有する表彰制度です。
「第1回環境表彰」では、24件の応募があり、以下の活動が選ばれました。
【最優秀賞】キッコーマン食品野田工場製造第1部「製麹(せいきく)加湿方法の改善」
【優秀賞】 流山キッコーマン「排水処理運転方法の改善」
キッコーマングループ近畿事務所「働き方改革による環境負荷の低減」
キッコーマンソイフーズ茨城工場「温水設備の改良、有効活用」
キッコーマンフードテック西日本工場「充填作業改善による資源の有効活用」
【特別賞】 埼玉キッコーマン「eco検定®受験で環境意識を向上」
キッコーマン食品東北支社「営業部門における環境に配慮した取り組み」
日本デルモンテ、日本デルモンテアグリ「デルモンテアグリ製品でグリーンカーテン」
2019年6月(環境月間)にキッコーマン野田本社にて表彰式を開催し、受賞した工場・事業所には、表彰状と盾が授与されました。

表彰式「キッコーマン食品野田製造第1部(最優秀賞)」
(2019年6月、キッコーマン野田本社)

表彰を受けた事業所メンバー
(2019年6月、キッコーマン野田本社)
4)環境標語
2021年6月、キッコーマングループは国内全従業員を対象に、環境標語募集を行いました。これは、全従業員に環境保全の重要性を認識してもらうために2017年に行った募集の第2弾にあたるものです。応募総数は前回を上回る1028作品。3段階の審査を経て、以下の16作品が入選しました。
大賞
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脱炭素! 未来につなげる 第一歩
金賞
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フ―ドロス 作る責任 廃棄ゼロ
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これからは サステナブルが あたりまえ
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製造者つくる責任最後まで、未来に残そうきれいな地球
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SDGs 未来に向けた 合言葉
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減らそうフードロス つくろうおいしい記憶、皆で取り組む環境活動
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いつまでもあると思うな水資源 この一滴を大切に
銀賞
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見直そう 買いすぎ 捨てすぎ 作りすぎ
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ECO活動 変えるは自分の意識から
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環境を 守る一手を あなたから
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「もったいない!」地球が喜ぶ エコワード
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温暖化 地球が発する SOS
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今すぐに あなたの変化が 地球を守る
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エコ活動 出さない 捨てない 汚さない
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どの川も 母なる地球の 大動脈
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この先も 自分で守る 水の星

8月の表彰式には、受賞者を代表して大賞受賞者が出席し、表彰状と盾が授与されました。
5)専門教育
キッコーマングループでは、「ISO14001内部監査員養成研修」「ISO14001内部監査員力量向上研修」「環境管理責任者力量向上研修」「排水処理施設管理者研修」「産業廃棄物管理者研修」などを定期的に開催し、それぞれの管理者・担当者の力量の向上を図っています。
2022年8月、社外の専門講師を招き、内部環境監査員養成講座を開催しました。今回は集合方式の研修会ではなくリモート方式とし、同じ内容でそれぞれ対象者を変えて、午前と午後に分けて行いました。
受講したキッコーマングループ各社の社員計60名(午前・午後30名ずつ)が、環境マネジメントシステム(Environmental Management System(EMS))、ISO14001規格要求事項、内部環境監査などについて学び、新たに内部環境監査員となりました。

内部環境監査員養成研修
(2022年8月 キッコーマン野田本社)

養成研修を終えた内部環境監査員を対象とする「内部監査員力量向上研修」では、具体的な監査ポイントや着眼点などについて触れ、監査員ひとりひとりの監査能力の向上に努めています。また、キッコーマン環境部の社員が、ISO14001認証取得企業のエリア(工場や事業所)を順番に巡り、エリア経営層(社長や工場長)、環境管理責任者やEMS事務局担当者、環境関連施設管理者などを対象に、新しい国際規格(ISO14001:2015)の講演会も開催しています。

内部環境監査員力量向上研修
(2018年9月 キッコーマン東京本社)

ISO14001:2015講習会
(2018年11月 宝醤油)
2022年度からは、現場でのEMSの具体的運用をさらに充実させるべく、グループ内企業ごとに内部監査員(および資格取得希望者)を集め、ISO14001:2015の規格に沿った各職場での目標設定、順守義務、成果測定、リスク管理などを具体的に学ぶ、延べ11時間半の集中講座(月2回に分けて5回)を行うことにしました。調味料を製造するキッコーマンフードテックでは、5月から7月にかけて集中講座が開かれ、4工場から14人が参加しました。同じ製造過程であっても、各工場での具体的な問題点の差が確認され、工場ごとのマニュアル作成や持続可能な仕組み構築の重要性が共有されました。これからも、グループ内企業ごとの集中講座を開催していく予定です。

ISO集中講座
(2022年5月、キッコーマン野田本社)
「産業廃棄物管理者研修」は、国内主要事業所の廃棄物管理者を対象とした研修で、外部の専門家を講師に迎え、廃棄物の分類、廃棄物関連法規と排出者責任、収集運搬及び処分業者の選択や委託契約、産業廃棄物管理票(マニフェスト)や電子マニフェストの取り扱い(申請・運用・確認などの方法)など、産業廃棄物管理上必要な基本的事項から、廃棄物処理に関する最新の技術まで、幅広く学ぶことができる内容になっています。研修終了後にはテストを実施し、出席者の習熟度や力量を測ります。

産業廃棄物管理者研修
(2019年3月 キッコーマン東京本社)

産業廃棄物管理者研修
(2018年12月 キッコーマン東京本社)
「排水処理施設管理者研修」は、キッコーマングループの国内主要事業所の排水処理施設管理者を対象とした研修で、排水処理の専門家から最新の排水処理技術に関するレクチャーを受け、キッコーマングループの工場の排水実態を分析し、それぞれに見られる課題と解決策を提議した内容について、意見を交換しました。

排水処理施設管理者研修
(2022年7月 キッコーマン野田本社)

排水処理施設管理者研修
(2022年7月 キッコーマン野田本社)
これからも、グループ内企業ごとの集中講座を開催していく予定です。
協力会社への環境教育
キッコーマン環境部は、産業廃棄物処理を委託している会社と、法令順守などのコンプライアンス共有を強化するため、年に一度懇談会を開催しています。コロナ禍のため2年ほど開催ができませんでしたが、2021年11月、委託契約を結んでいる大手10社の参加を得て、第4回目の懇談会を開催しました。席上、キッコーマングループの業務を支えてくれている産業廃棄物処理業務の重要性を確認しながら、処理業務の破綻事例をもとに法令順守の重要さと、持続可能な業務契約維持に必要な社内管理の在り方などについて意見交換をしました。

社外評価システムの活用
キッコーマングループは、社外団体による調査に、積極的に参加し、自社の環境保全活動に対する公平性・客観性の高い評価を得ることにより、自社の活動のより改善・改良へとつなげるように努めています。
1)日経「SDGs経営調査」
2022年5月~7月に行われた調査では、キッコーマングループを含む886社の評価、格付けが行われました。
キッコーマングループの総合ランキングは「星3.5」(偏差値59.5)でした。内、環境価値については偏差値62.4で、特に、「気候変動、資源、生物多様性」「消費電力」「水資源」「温暖化ガス・脱炭素」の指標で高評価を得ました。
2)東洋経済「CSR企業ランキング」
東洋経済新報社は、キッコーマングループを含む1 ,631社(上場企業1 ,568社および未上場企業63社)を、財務および社会的責任(CSR)の両面から評価して順位付けした東洋経済「CSR企業ランキング2022年版」を、週刊東洋経済2022年3月5日号で発表しました。
キッコーマングループの「環境」に関する評価は90.1ポイントで、上場企業全体での順位は114位でした。CSR全体での総合順位(上場企業)は191位で、食品製造業では10位となりました。
環境マネジメントの推進に関する個々の活動については、「キッコーマングループ 環境保全活動事例集」にまとめてあります。