主な取り組み
資源の活用
キッコーマングループは、貴重な資源を有効に活用するために、食品ロスの削減や環境配慮型商品の展開に取り組みます。食品ロスを削減する施策として、製造や流通の段階で発生する廃棄物の削減をすすめます。
生産部門での取り組み(廃棄物・副産物の再生利用)
製造における歩留りや工程の改善などの施策を通して、排出される副産物(しょうゆ粕、しょうゆ油、果実の搾汁残さ、おからなど)や廃棄物(汚泥など)の削減に努めるとともに、廃棄物・副産物の再生利用・有効活用にも努めています。
1)しょうゆ粕(かす)の利用
「しょうゆ粕」は、しょうゆもろみを搾って生揚げしょうゆをつくる際に搾りかすとして残る副産物です。
しょうゆ粕は、古くから燃料、肥料や家畜用飼料として利用されてきました。キッコーマンでも、2004年から飼料としての有用性の研究を進め、2006年には工場にしょうゆ粕の乾燥設備を、さらに2007年にはしょうゆ粕の袋詰め設備を導入し、同時に販路の開拓・拡大も進めてきました。しょうゆ粕は、大豆由来の脂肪分、ビタミンEやビタミンK₁、イソフラボン類(ゲニステイン、ダイゼイン、グリシテイン)などの機能性成分を多く含むため、牛・豚・鶏用飼料に適しています。キッコーマン食品では、しょうゆの製造工程から排出されるしょうゆ粕のほぼ全量(100%)を、飼料として、飼料業者を通して畜産農家に提供しています。

しょうゆ粕飼料

しょうゆ粕を利用した名刺
また、2000年には、製紙メーカーとの協働で、非木材紙に混ぜて紙製品化する技術も開発しました。これらの紙製品は、名刺などとして利用されています。
2)しょうゆ油(あぶら)の利用
圧搾直後の生揚げしょうゆには、大豆に由来する多量の油(しょうゆ油)が含まれており、清澄タンクの中で貯えておくと、生揚げしょうゆの上部に浮かんできて、油の層をつくります。この「しょうゆ油」は、古くから燃料(江戸時代には「燈油」)やせっけんの原料、機械油として利用されてきました。

しょうゆ油で動かす専用ボイラー
キッコーマン食品では、1994年以降、しょうゆの製造工程から排出されるしょうゆ油の大半を、カーボンニュートラルなボイラーの燃料として利用することにより、化石燃料の使用量の削減にもつなげています。
3)大豆の粉の活用
2022年6月、キッコーマン食品野田工場は、千葉県立農業大学校の「未利用資源の飼料的価値」研究に協力して、しょうゆの製造工程で発生する大豆の粉220㎏を提供しました。農業大学校ではこれを肥育後期の豚に給与し、発育成績・官能検査・経済性を調査し、飼料的価値を確認することとしています。これまで大豆の粉は、産業廃棄物として処分されていますので、もし飼料的価値が確認されれば、畜産農業に寄与するばかりか、食品ロスの削減と産業物廃棄から派生するCO2削減など、環境保全にも役立つことになります。

4)おからの利用
キッコーマンソイフーズでは、「調製豆乳」や「おいしい無調整豆乳」などの豆乳製品を製造・販売しています。
豆乳は、大豆をゆでた後に破砕し、搾って製造しますが、この際に残る搾りかすが「おから」です。

食品原料「おからパウダー」
キッコーマンソイフーズでは、副産物であるおからを乾燥して粉末化させ、食品原料などとして販売しています。
2018年度には、家庭向けのおから製品「キッコーマン 豆乳おからパウダー」を発売しました。
この「キッコーマン 豆乳おからパウダー」は、食物繊維や植物性たんぱく質など、大豆の栄養を豊富に含んでおり、わずか大さじ1杯でレタス約1/2個分の食物繊維を摂ることができます(日本食品標準成分表2015を用いた試算)。きめ細やかでなめらかな食感で、水分となじみやすく口溶けがよいのが特徴です。しかも、キッコーマンソイフーズ(豆乳製造会社)独自の「大豆の豆臭さを抑えた豆乳の製造工程」で生じる副産物(おから)を原料として用いているため、豆臭さが少なく、ヨーグルトやスムージー、味噌汁などに料理の風味を損なうことなく混ぜられ、大豆の栄養を毎日簡単に摂ることができます。また、小麦粉の代わりとして、パンケーキの生地やカレーのとろみ付けなどに使えば、「グルテンフリー」の献立づくりにも活用できます。

「キッコーマン 豆乳おからパウダー」
(120gプラスチック袋)
この「キッコーマン 豆乳おからパウダー」は、こうした使い勝手のよさなどが高く評価され、株式会社サンケイリビング新聞社の第25回リビング新聞「助かりました大賞」の食品・飲料部門(10商品)に入賞しました。

第25回リビング新聞「助かりました大賞(食品・飲料部門)」入賞
5)汚泥(おでい)の利用
キッコーマングループでは、工場から排出される排水を併設の処理施設にて浄化処理し、処理後に放流する河川などの汚染防止に万全の注意を払っています。この排水処理施設において、浄化処理する過程で発生する泥状の沈殿物や浮遊物が「汚泥」です。

汚泥からつくられた発酵肥料
キッコーマン食品野田工場と流山キッコーマンは、排水処理施設から排出される汚泥のすべて(100%)を処理業者に委ねて発酵肥料化させ、サツマイモやイチゴなどを栽培している農家などに提供しています。

汚泥発酵肥料で育てられたサツマイモ畑(2019年、茨城県)

汚泥発酵肥料で育てられたイチゴ(2015年、茨城県)
このような汚泥などからつくった発酵肥料は、窒素やリンを多く含んでおり、こうした農作物の栽培に適しています。
また、キッコーマンバイオケミファ鴨川プラントで排出された汚泥の一部については、圧縮加熱してスラグ化することにより、路盤剤など道路整備用の原料として利用しています。
副産物の質の高い利用を目指した研究開発
キッコーマングループは、副産物の再利用における質の向上も重視しており、そのための研究開発にも努めています。
たとえば、しょうゆ油の養魚用飼料としての利用に関する研究開発もその1例です。キッコーマンの研究グループは、大豆に由来するリノール酸・オレイン酸から構成される脂肪酸エチルエステル(約59%)や遊離脂肪酸(約15%)を主成分とするしょうゆ油が、それまで養魚用飼料として用いられていた「いわし油」の代替品としての有効性だけでなく、さらに抗酸化活性や魚病細菌に対する抗菌活性などの機能性も備えていることを見出しました。この副産物の用途開発に関する研究は、専門家の方々からも高く評価され、2003年度の「経済産業省産業技術環境局長賞」を受賞しました。
マンズワインでのワイン製造工程から排出されるブドウの種子は、肥料として利用してきましたが、キッコーマンとマンズワインの共同研究グループは、ブドウの種子に含まれるポリフェノール(プロアントシアニジン)が強い抗酸化活性を持つことを見出し、この成分を効率的に抽出する独自の方法を開発しました。この研究開発の成果は、専門家の間でも高く評価され、1999年度の「農芸化学技術賞」を受賞しました。
また、日本デルモンテ長野工場(長野県千曲市)でのトマトジュースの製造工程から排出されるトマト果皮も、専門業者に委ねて家畜用飼料として再利用してきましたが、キッコーマンは未病医学研究センターとの研究開発を通して、ポリフェノール(ナリンゲニンカルコン)を含む果皮が花粉症の症状緩和に役立つ強い抗アレルギー活性を持つことを見出しました。

プロアントシアニジン(ブドウ種子ポリフェノール)

ナリンゲニンカルコン(トマト果皮ポリフェノール)
オフィスでの取り組み
1)事務用紙の削減
キッコーマングループでは、廃棄物削減の一環として、1997年にISO14001認証を取得した野田プラント(現 野田工場)にはじまり、キッコーマン野田本社・東京本社、キッコーマン食品 各拠点、日本デルモンテ 各拠点、マンズワイン各拠点などの国内主要拠点で事務用紙削減目標を掲げ、裏紙の活用、発注書や会議資料などのペーパーレス化、無駄な印刷をしない仕組みづくりなどに取り組んでいます。また、それでも必要となる事務用品には、原則として、FSC認証紙(※1)やPEFC認証紙(※2)などを選び、資源に配慮した購入をすすめています。
(※1)FSC認証紙:環境や社会に配慮した持続可能な管理を受けている森林から提供された原材料を、適切な加工、流通段階を経て消費者に届けられていることを、FSC(Forest Stewardship Council、森林管理協議会)の世界共通規格の下に認証されている紙。
(※2)PEFC認証紙:汎欧州産業ガイドラインを基準として世界各国の認証制度との相互承認を行うプログラム(Programme for the Endorsement of Forest Certification Scheme)により認証を受けている紙
2)事務用品再利用コーナーの設置
キッコーマン東京本社では、2018年4月から、廃棄物およびコストの削減を目的に、東京本社3階の多目的ホール内に「事務用品再利用コーナー」を新設し、運用を開始しました。各部署が不要となった事務用品(クリップやクリアファイルなど)を東京総務課に集めて(破損や汚れで再利用できないものは取り除き)きれいにし、多目的ホール内の「事務用品再利用コーナー」に品目・サイズ別に区分け保管することにより、再利用を促します。各部署で新たに事務用品を購入する際には、まず、ここで在庫を確認してもらうことにより、コスト削減と、さらに廃棄物の削減にもつながっています。

事務用品再利用コーナー
(キッコーマン東京本社3階多目的ホール)

3)「文書管理ルール」の再構築と徹底
2015年度、キッコーマン近畿支社(キッコーマングループ近畿事業所)は、南海なんば駅直結の商業施設・オフィス複合型ビル「なんばパークス」(大阪市)の5階に移転しました。
近畿事業所では、この移転に際し、「新しい働き方」をめざす一環として文書管理に関するワーキング・チームを結成しました。紙文書の6割削減を目標に、文書・情報管理の外部コンサルタントの支援を受けながら、より現状に合った「文書管理ルール」を再構築し、全員で取り組みました。こうした活動により、新オフィスでは、文書・資料探しの手間が軽減されるなど、業務効率の向上とともに、業務における紙使用量の大幅な削減につながりました。

なんばパークス

「第29回日経ニューオフィス賞 近畿ニューオフィス推進賞」受賞
近畿事業所は、こうした活動も含め、「知識資産や情報が適切に管理され、運用されている」「ITを活用した知的生産活動の場となっている」「ワーカーが快適かつ機能的で精神的にゆとりを感じるような生活の場となっている」「地球環境への影響や地域社会への貢献など、社会性が配慮されている」点などが高く評価され、第29回日経ニューオフィス賞の「近畿ニューオフィス推進賞」に選ばれました。
資源の活用に関する個々の活動については、「キッコーマングループ 環境保全活動事例集」にまとめてあります。
キッコーマングループでは、今後、より一層の廃棄物の削減とその再生利用を推進してまいります。