食の環境(水環境・調達)

キッコーマングループと「水」

キッコーマン醤油株式会社工務部水道課浄水場(1975年(昭和50年)に野田市に移管)
キッコーマン醤油株式会社工務部水道課浄水場(1975年に野田市に移管)

「水」は、しょうゆなど、キッコーマングループ製品の品質の良し悪しを決定付ける重要な要素のひとつです。キッコーマングループにとって、製品を生産するうえでも、また原材料である農作物を生産するうえでも、「水」は極めて重要な役割を担っています。キッコーマングループの事業は、「水」に支えられているといっても過言ではありません。
キッコーマンは、創業当時(当時の社名は野田醤油株式会社)から用水の水質に最大の注意を払い、工場内に井戸を掘り、自社で浄水処理を行える設備を整えてきました。こうした設備の充実に伴い、1923年には場内での浄水能力にかなりの余裕が生じたことから、工場がある千葉県野田市の一般家庭向けにも給水を開始(これが千葉県下で最初の水道施設となりました)、1975年4月に野田市に移管するまでの52年間に渡り、水道事業を担っていました(1975年当時、弊社が給水していた住民は2万4000人(5740世帯))。
「水」は、社会の貴重な資源であり、その保全は重要な課題であると、認識しています。

キッコーマングループは、水を有効に活用し、環境への負荷を低減するための取り組みを精力的に推進しています。

用水使用量削減に向けた取り組み

キッコーマングループの生産拠点(工場)では、生産活動にともなう用水の使用量を測定し、用水量や、製造量当たりの用水量(用水原単位)を管理し、既存の工程の見直しや効果的な施策の導入を通して、効率的な削減を目指しています。

1)冷却水の再利用


北海道キッコーマンでは、製造工程における冷却工程に使用したきれいな用水を、場内設備などの洗浄用水として再利用するなどの取り組みを徹底することを通して、用水原単位の低減に努めています。

2)製麹室(せいきくしつ)加湿方法の見直し


キッコーマン食品野田工場製造第1部では、2018年度に、しょうゆ麹(こうじ)をつくる「製麹室(せいきくしつ)」の加湿方法を見直し、機器の仕様や配置に変更を加えることで、この工程での用水使用量を年間約22,320㎥削減することができました。この施策により、同時にコンプレッサーの稼動時間の削減による電力使用量の削減を通して、CO排出量も削減できる見込みです。

円型製麹室内 (キッコーマン食品野田工場製造第1部)

円型製麹室内(キッコーマン食品製造第1部)

3)プレートヒーターのCIP洗浄プログラム変更


2022年、キッコーマン食品野田工場製造第2部では、これまで定常的に進められていたCIP工程(定置洗浄工程)の中で、「すすぎ」「洗浄」過程を再検証したところ用水洗浄削減の可能性を見出したため、自発的に工程ごとの水使用量を調査した上で、CIP薬剤メーカーと協力してプログラムを適正化、効率化の視点で見直した結果、用水量56%削減、工程時間69分短縮に成功しました。

プレートヒーター(キッコーマン食品野田工場製造第2部)

プレートヒーター(キッコーマン食品野田工場製造第2部)

4)設備の容量アップと冷却水・洗浄水最適化による用水削減


2022年、キッコーマンフードテック西日本工場では、工場内各部署のISO担当者が水使用量最適化を目指して協議を重ね、場内での調合タンク、冷却バルブ、ライン洗浄などの工程で効率アップや無駄の削減などを進めたところ、2020年度比で3,800㎥の用水を削減できました。

水環境の保全に関する取り組み

キッコーマングループでは、水環境を保全することの重要性を強く認識しており、生産活動にともなって発生する、排水のBOD(生物化学的酸素要求量)などの水質基準値に、法定基準よりも厳しい自主基準を設定し、製造工程や機材の見直し、効率的な施策を通して生産拠点(工場)周辺の水環境の保全に努めています。

1)オゾン反応装置の導入


キッコーマン食品野田工場製造第2部の排水処理施設では、2013年10月に、オゾン反応装置を導入し、処理後の水をさらに浄化してから河川に放流する方式に改善しました。

オゾン発生装置 (キッコーマン食品野田工場製造第2部)
オゾン発生装置
(キッコーマン食品野田工場製造第2部)
オゾン反応装置 (キッコーマン食品野田工場製造第2部)
       オゾン反応装置
       (キッコーマン食品野田工場製造第2部)

2)東京湾環境一斉調査への協力

キッコーマングループは、東京湾再生推進会議モニタリング分科会などが実施している「東京湾環境一斉調査」に、2009年度から毎年参加しています。本調査は、東京湾および湾に流入する河川・湖沼および沿岸施設などを対象としており、東京湾の汚濁メカニズムを解明することを目的にしています。キッコーマングループは江戸川に面した排水処理施設の放流水の水質調査を実施し、調査結果を提供しています。

放流水(処理水)の水質調査(2019年8月、流山キッコーマン)
放流水(処理水)の水質調査(2023年8月、野田工場製造第3部ラグーン)

3)設備改善による排水薬品使用量の削減

2023年、タイのサイアム・デルモンテでは、原料として使用しているコーンの粒が水とともに排水池に行かないように2つのスクリーンを改善して、排水のBODを削減し、排水薬品の使用量9.7%を削減しました。

円型製麹室内 (キッコーマン食品野田工場製造第1部)

オフィスでの取り組み

1999年竣工のキッコーマン野田本社ビルは、「環境共存型オフィス(サスティナブル・オフィス)」として設計された建屋であり、自然との調和や環境負荷低減を目指して、さまざまな先進的工夫が盛り込まれています。
事務所棟と会議室棟とに挟まれた開放的な中庭には、雨水を溜める池を配置した「水の庭」を設け、景観に配慮するとともに、水資源の確保も図りました。

会議室棟と「水の庭」
会議室棟と「水の庭」
「水の庭」に現れた野生のカルガモ

海外での水環境保全活動の支援

キッコーマングループは、生産拠点のあるアメリカやシンガポール、オランダなどの地域で水問題の解決に貢献するため、地元政府やNGO団体による水環境保全活動を支援しています。

KFIは1993年に慈善基金団体である「Kikkoman Foods Foundation, Inc.」を設立し、現地教育機関への寄付活動や災害義損金の拠出を行っています。

Laboratoriesの入居している建屋
Laboratoriesの入居している建屋
Laboratoriesのサイン
Laboratoriesのサイン

2013年、その Foundation は KFI初出荷40周年を記念して、ウィスコンシン大学ミルウォーキー校の「スクール・オブ・フレッシュウォーター・サイエンシズ」が水資源について研究する The Kikkoman Healthy Waters Environmental Health Laboratories の設立を支援するため、100万ドルを寄付しました。

さらに2023年6月、KFI の1973年のグランドオープニングから50周年を記念して、ウィスコンシン大学に対し持続可能な農業と淡水研究への支援として総額500万ドルの寄付を発表しました。具体的には、ウィスコンシン大学マディソン校の農業生命科学部に300万ドルを寄付し、大豆・小麦を含む農作物の持続可能な生産に関する研究を支援します。また、ウィスコンシン大学ミルウォーキー校の淡水科学部に200万ドルを寄付し、五大湖用の最新鋭の調査船の建造およびその運用を支援します。

どちらの研究支援もKFIがオープニング時から恩恵を受けている貴重な天然資源の保護に役立つものです。

また、シンガポールではKSPによるキングフィッシャー・レイク造成プロジェクト支援、オランダではKFEによるフローニンゲン州ザウドラーデル湖における水質改善プロジェクト支援なども行っています。

サプライヤー・エンゲージメント

キッコーマングループではサプライヤーとの協働に取り組んでいます。その一環として、2023年度にキッコーマン(株)経営企画部、同 環境部、キッコーマンビジネスサービス 購買部が共同で大豆、容器・包材、カートンのサプライヤー3社を訪問し、対話を実施しました。
今回の対話では、キッコーマングループの考え方を説明するとともに、各サプライヤーがそれぞれのサプライチェーンで取り組んでいるサステナビリティ面での活動に関する説明を受け、今後の協働に向けた討議を行いました。

国連CEOウォーター・マンデート署名

2015年6月、キッコーマングループは、日本企業として初めて「CEOウォーター・マンデート」(The CEO Water Mandate)に署名しました。
「CEOウォーター・マンデート」は、2007年にジュネーブで開かれた「グローバル・コンパクト・リーダーズ・サミット」(キッコーマングループは、国連グローバル・コンパクトに2001年1月に参加しています)において、国際的企業6社が共同で立ち上げを発表し、国連とスウェーデン政府が協力した官民共同のイニシアティブ活動です。水の持続的可能性を守る多岐にわたる活動に、方針、実践、情報開示などに関する国際的な行動規範(プラットフォーム)を示すもので、個々の企業は、CEOが署名することで、水資源保護の国際的パートナーの一員として、受託責任(スチュアードシップ)を果たす意思を明確に示すことになります。

環境省ウォータープロジェクトへの参加

2015年、キッコーマングループは環境省の「ウォータープロジェクト」に参加しました。
環境省は、2014年に成立した「水循環基本法」下で、水を「守り育て」「贈り使い」「大切に還す」をキーワードにした水の正しい循環法(ジャパンウォータースタイル)を提唱しています。「ウォータープロジェクト」は、そのような水循環の維持・回復の推進につながる取り組みを主体的に行っている企業・団体などが、それぞれの取り組みを積極的に情報発信し、水循環に関する国民の理解を促進していこう、というプロジェクトです。

保全活動の紹介

1)CDPイベント会合での活動紹介

2022年2月、環境省とCDP(環境分野の国際NGO)共催による、「CDP水セキュリティレポート2021報告会xWater Project」のイベント会合がWEB方式で開催されました。これは、健全な水循環の重要性について企業や自治体の関心を高めるために開かれたもので、会議では、CDPの「企業の水リスク対応調査結果」発表と並んで、水セキュリティに取り組む先進企業事例などが紹介されました。
キッコーマンは、先進企業の一つとして、明治ホールディングスと共にパネルディスカッションに参加し、環境部長が「環境理念と長期環境ビジョン」の下で進めている「水を大切にする取り組みと水管理の概要」を紹介しました。

2)名古屋地区工業用水道協議会での講演

「名古屋地区工業用水道協議会」は、愛知用水工業用水を利用する企業と、用水の管理者である愛知県企業庁が、水の安定的な利用を進めるための意見交換の場として活動し、年に1回の総会時期には、水のリスク管理に優れた実績を持つ企業を招いて講演会を開いています。2022年にはキッコーマンに講演依頼が寄せられました。
6月の総会にキッコーマンの環境部長が出席し、環境課題は経営活動の重要な一部であるとして、事業に環境活動をきっちりと組み込んでいる「キッコーマンの水の管理と環境に関わる取り組み」を、水のリスク管理からその他環境上の幅広いリスク管理に至る実態を含めて、企業姿勢から活動事例を具体的に紹介しました。

社外評価システムの活用

1)CDP

社外評価のひとつであるCDPは、企業に気候変動対策や温室効果ガス削減、水資源保全、森林資源保護などに対する戦略、企業活動が環境や自然資源などに及ぼす影響についての情報開示を求めるとともに、その影響を軽減する対策を取るように働きかける非営利団体です。同団体は、主要な国の時価総額が比較的大きい企業に対して回答を求め、その結果を評価(スコアリング)し、公表しています。
キッコーマングループは、2017年から「CDP ウォーター質問書」に回答し、自社の環境保全活動、特に事業活動に伴う用水使用量の削減や水資源・水環境の保全などの取り組みが世界的にどのような水準にあるのかを客観的に把握するためのツールとしても活用しています。

CDP™ DISCLOSURE INSIGHT ACTION

「CDP水セキュリティレポート2023:日本版」に公表された2023年のキッコーマングループの評価結果は、リーダーシップに分類され、最高評価の「Aリスト」に選定されました。

CDP™ DISCLOSURE INSIGHT ACTION A LIST 2019 WATER

11の評価項目中、「定量的目標と定性的目標」「水のアカウンティング」など9項目で「A」評価を受けました。

2)「水循環ACTIVE企業」に認証

キッコーマンは、水循環に資する取り組みを実施する企業として、内閣官房水循環政策本部事務局の令和6年度「水循環企業登録・認証制度」※1水循環ACTIVE企業に認証されました。
今回の認証は、当社が既存の工程の見直しや効果的な施策の導入を通じて、効率的な用水使用量削減をしている取り組みが認められたものです。

※1水循環に資する企業の取り組みを政府が積極的に認証しインセンティブを高めることにより、より一層企業の取り組みを継続・促進することを目的として令和6年度に創設された認証制度。

食の環境(水環境・調達)の保全に関する個々の活動については、「キッコーマングループ 環境保全活動事例集」にまとめてあります。

キッコーマングループは、今後もさらなる高い目標を設定し、食の環境の維持に努めてまいります。