気候変動
2030年に向けたキッコーマングループの目指す姿とその戦略を定めたグローバルビジョン2030では、目指す姿のひとつに「キッコーマンらしい活動を通じて、地球社会における存在意義をさらに高めていく」を掲げています。地球社会が抱える課題の解決に寄与することで、世界中の人々からキッコーマンがあってよかったと思われる企業になりたいと私たちは考えています。
近年、世界各地で高温や熱波による健康被害、深刻な干ばつによる水不足、豪雨による洪水などが多発し、その被害が大きくなってきています。こうした異常気象には気候変動が大きく関わっており、地球規模で、生命、財産、経済活動を脅かす社会課題となっています。こうした背景から、SDGs(Sustainable Development Goals=国連の持続可能な開発目標)で気候変動がゴールのひとつとして取り上げられ、また、パリ協定では長期目標が定められました。
パリ協定で示された長期目標を踏まえ、キッコーマングループは2050年のCO₂排出量ネットゼロ実現をめざした取り組みを行っています。その一環として、私たちは長期環境ビジョンに基づいて2030年までに2018年度比 CO₂排出量30%以上削減達成に向けた取り組みを推進しており、SBT(Science Based Targets)へのコミットメントを行いました。今後、認定を取得するための準備をすすめます。また、将来的な技術革新にあわせて中長期のCO₂排出量削減計画を適宜更新していきます。
CO₂排出量と削減目標

※CO₂排出量ネットゼロとは、CO₂排出量から森林や炭素貯蔵技術などによるCO₂の吸収量などを引いた通計の値を差し引きゼロにするという意味。
TCFD提言にもとづく開示
キッコーマングループは、地球社会が直面している最も深刻な社会課題のひとつが気候変動だと認識しています。気候変動問題に取り組むことは、当社グループ経営理念である「地球社会にとって存在意義のある企業をめざす」の実践であることはもちろん、自社の持続的成長戦略のレジリエンスに直結する財務的課題でもあると考えています。
当社グループは、金融安定理事会(FSB)の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明し、TCFD提言に基づき、気候変動が事業に与えるリスクおよび機会を評価し、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標について開示をすすめます。
ガバナンス
当社グループは、CEOをグループ全体の最高経営責任者とし、グループ経営会議をその意思決定のための審議機関としています。グループ経営会議では、各種の社会・環境課題への対応を重要な経営テーマと位置付け、継続的にリスクならびに機会の協議を行いつつ、方針の策定や取り組み強化に向けた討議を適宜実施しています。中でも気候変動については「キッコーマングループ長期環境ビジョン」の主要な柱のひとつにとらえ、長期的な経営計画を策定しています。同ビジョンの課題認識を当社グループの戦略に統合するため、CEOは、気候関連の目標と進捗状況に関する報告を当社取締役会に対して行っています。また、その報告をもとに、当社取締役会は気候変動問題を含む当社グループの重要方針や進捗状況を決定、監督し、当社グループ経営戦略に反映させています。
同時に、当社グループは、キッコーマン(株)代表取締役専務執行役員CSO(最高戦略責任者)が委員長を務める「企業の社会的責任推進委員会」を設置し、当社グループ経営戦略に基づき、気候変動を含む社会課題解決に向けた全社的な取り組みを推進しています。企業の社会的責任推進委員会事務局は気候関連課題を含む社会課題に関する検討を行っており、CEOへの報告を行うほか、CEOが参加する会議体(グループ経営会議等)において報告および討議を行っています。
加えて、各グループ会社・事業所組織への気候課題を含む環境保全活動に関する目標・方針の具体的な展開を行い、グループ全体の環境関連ノウハウと技術の蓄積、変化への対応力の向上などを推進するため、キッコーマン(株)常務執行役員(統括環境管理責任者)が委員長を務める環境保全統括委員会を設置しています。また、各拠点の環境管理責任者を中心とするメンバーで構成する環境保全推進委員会を環境保全統括委員会の下に設け、詳細なデータや事例の共有化を推進しています。
ガバナンス体制図

戦略
キッコーマングループは、当社グループ経営理念に基づき、当社グループの目指す姿と基本戦略を定めた長期ビジョン「グローバルビジョン2030」を2018年に策定しました。グローバルビジョン2030の策定にあたっては、「社会にとっての重要な社会課題」と「キッコーマングループにとっての重要な社会課題」のふたつの視点で分析を行い、重要な社会課題3分野として「地球環境」「食と健康」「人と社会」を特定しました。そのうえで2030年に向けた環境ビジョンである「キッコーマングループ長期環境ビジョン」を2020年に定め、具体的な施策に取り組んでいます。これらのビジョン等に即した活動を推進しつつ、当社グループは、かねてより震災や気候変動の影響を含む洪水リスクを事業停止、収益低下の起因として認識し、Business Continuity Plan(BCP)の策定や自然災害シミュレーションの実施など、グループ全体で施策を推進してきました。中でも主要商品に天然の原材料を使用していることから気候変動によって起こりうる変化によって事業が大きな影響を受ける可能性に関して、グループ全体で注視しています。近年、気候変動リスクへの社会の関心が高まる中、当社グループは、気候変動による当社グループへの中長期的な影響や定量的なリスクの把握のためTCFD提言の内容に準じて、当社グループの事業領域における想定しうるリスクを複数のシナリオをもとに分析しています。

シナリオ分析
シナリオ分析では、気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change:IPCC)報告書に基づいた代表濃度経路シナリオ(Representative Concentration Pathways:RCPシナリオ)および国際エネルギー機関(International Energy Agency:IEA)持続可能な開発シナリオを採用しました。なおシナリオごとの分析結果ならびに事業への影響に関する見解は、以下の通りとなります。
気候関連シナリオとモデル | 内容 |
---|---|
RCP8.5 |
【シナリオ分析の概要】 |
RCP6.0 RCP8.5 |
【シナリオ分析の概要】 |
IEA持続可能な開発シナリオ |
【シナリオ分析の概要】 |
リスク管理
キッコーマングループでは、事業の安定的な発展を実現し、ステークホルダーへの責任を果たすため、当社グループの活動を取り巻くリスクに備えた取り組みをすすめています。また、キッコーマングループが多数の事業をグローバルに展開していることを踏まえ、さまざまに異なるリスクと機会を把握・管理するため、担当する子会社および部門を各執行役員が指揮し、リスク顕在化の未然防止に努めています。
2010年10月、キッコーマングループを取り巻くさまざまなリスクに対する的確な管理と実践を目的に、リスクマネジメントに関する基本的事項を定めた「キッコーマングループ リスクマネジメント規程(リスクマネジメント規程)」を制定しました。リスクマネジメント規程ではリスクを「経営における一切の不確実性」と定義し、以下のものを含むとしています。また、リスクの定義を自然災害や事故だけに限定せず、気候変動を含む環境問題などの内容も含んだものとして認識しています。
❶ キッコーマングループに直接または間接に経済的損失をもたらす可能性
❷ キッコーマングループの事業継続を中断・停止させる可能性
❸ キッコーマングループの信用を毀損し、ブランドイメージを失墜させる可能性
キッコーマングループは、中長期的な気候関連リスクを評価・管理し、適切に対応するためにシナリオ分析を活用するとともに、物理リスクおよび移行リスクの把握と対応をすすめています。気候変動に関わる世界各国の情勢や規制の動向は、外部組織(日本気候リーダーズ・パートナーシップやThe Consumer Goods Forum等)との連携を通じて確認しており、必要に応じて当社の取り組みに反映させています。また、キッコーマングループの事業に関わるリスクを網羅的に毎年評価しており、気候変動関連問題はそのリスクのひとつとして取り組んでいます。そのうえで、事業に影響するリスク事案を特定するとともに影響度合いを分析し、取締役会への報告を行なっています。

指標と目標
国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において2015年に採択されたパリ協定では、「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べ2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求」することなどが定められました。
パリ協定で示された長期目標を踏まえ、キッコーマングループは2050年のCO₂排出量ネットゼロ実現をめざしてCO₂排出量の削減に取り組む方針を定めました。そのために、当社グループは長期環境ビジョンに基づき、2030年までに2018年度比CO₂排出量30%以上削減達成に向けた取り組みを推進します。また、将来的な技術革新にあわせて中長期のCO₂排出量削減計画を適宜更新していきます。

2021年10月更新