江戸から学ぶ 食の「しつけ」と「こころ」
江戸の食育『養生訓』から学ぶ 1
「食」が変わると「こころ」も変わる
1713年(正徳3年)に貝原益軒が著した『養生訓』に、次のような教えがあります。
一.生命は天から授かったもの、養生を心がければ長命を保て、その長さはその人の心がけ次第。
二.飲食は、生命を養うが大きな欲望で抑制が必要。
三.飲む水や食べ物はよく選べ、それによって天性(親から受け継いだ性質)まで変わる。
「食」が変わると「こころ」もまた変わる、と教えています。この『養生訓』は八巻十七項目にわたり、貝原益軒の長い生活体験と広い学問知識をもとに、明るい健康的な生活の営みを物心両面から著しています。

早稲田大学図書館所蔵
『巻三/飲食上』
飲食は生命の養分、人生でいちばん必要なもの。しかし人の大欲で、好みに任せず節度をもうけてからだを養う。少し食べて味のよいことは、たくさん食べる楽しみと同じ(腹八分目)。からだを養うものを選んで食べよ。
『巻四/飲酒』
酒は天の美禄(よいさずかりもの)、少し飲めば役にたつ。酒を人にすすめるには、少しすすめてみる。ことわったらすすめない。客はすすめなくても、常より少し多く飲む。
『巻八/育幼』
子どもは三分の飢えと寒さで育てよ。子どもは熱が多いから、風や太陽に当たらせよ。

1812年(文化9年)版(巻第一、巻第二及び巻第三、巻第四)
中村学園大学三成教授所蔵
