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-よみもの-

第15回 小学校高学年の部(作文)読売新聞社賞

2週間ぶりの感動と言ったら!

8歳の秋、お父さんの仕事で日本からアメリカに引っ越しました。友達と離れるのは寂しかったけれど、私は食べることが大好きで、特にピザやフライドチキンが好物だったのでアメリカに引っ越すことがとても嬉しかったです。

アメリカに着いてすぐ、空港のコーヒーショップやレストランからするいい匂いにワクワクしたのを覚えています。

お腹がすいた私たちは、コーヒーショップのサンドイッチがアメリカ一番初めの夕飯でした。夕飯がサンドイッチなんて日本では考えられなかったので、気分は最高でした。

そんな楽しくわくわくしているだけの私とは反対にお母さんは、これからのアメリカ生活に少し不安そうでした。

アパートの契約ができるまでの間、ホテルの近くのスーパーでお惣菜を買って食べました。私は毎日ピザやチキンを選びました。そして、学校の転入手続きも終わり小学校に通い始めました。日本人は私1人だけの学校です。

普段ポジティブな私ですが、急に日本の友達が恋しくなりました。アメリカの学校ではすぐには友達が出来なかったからです。

学校の給食はピザかフライでした。この頃から、あんなに大好きだった洋食よりも、日本食が食べたいと考えるようになりました。

ある日学校から帰ると、お母さんが笑顔で言いました。「今日はスーパーで、めんつゆと素麺を見つけたよ!」

その日の夕食は、テーブル代わりのダンボールに乗せた素麺と、ネギも何も入っていない、めんつゆでした。2週間ぶりに食べた日本の味に、お母さんは泣いていました。私はそんな大袈裟なお母さんを見て笑っていましたが、お母さんの感動した気持ちもすごくよくわかりました。

その後3年アメリカに住みましたが、立派な食事テーブルで食べる、たくさんの日本の調味料で作られた日本食より何より、あの時の素麺とめんつゆのおいしさにかなう夕飯はありませんでした。今は日本に帰国して、いつでも日本の食材が手に入る環境ですが、あの時のめんつゆをスーパーで見るたびに、お母さんの泣き顔と美味しかった記憶がよみがえります。

INFORMATION

第15回 小学校高学年の部(作文)読売新聞社賞
「2週間ぶりの感動と言ったら!」
久冨 さくら ひさとみ さくら さん(広島県・12歳) 英数学館小学校 6年
※年齢は応募時

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