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-よみもの-

第16回 小学校高学年の部(作文)優秀賞

父の作る地球一の年越し蕎麦

 大晦日は一年で一番好きな一日です。なぜならぼくの父は蕎麦屋で、毎年大晦日はいつもの朝よりももっと早い午前三時から年越し蕎麦を作ります。そして冬休み中なので、友人に会えないけど、この日はみんな家族で僕のお店まで来て年越し蕎麦を買っていってくれるからです。

「敬蔵パパの蕎麦を食べないと年越し出来ないんだよ。」

「敬蔵パパの作るお蕎麦は本当においしいよ。」

などと言ってくれるので、ぼくは一年の最後の日に心がうれしい気持ちでいっぱいになります。

 そして夜、一日早いおせち料理と紅白歌合戦を見ながら年越しをします。父は家族の年越し蕎麦用にお鍋でお湯を沸かし始めます。ガス台にはその鍋とは別のもう一つお鍋が沸かしてあります。それはぼく専用のうどん用のお鍋です。僕はそばアレルギーなのです。蕎麦屋の子供なのに父が作ったそばを食べることが出来ません。普段は僕を気にして父のお蕎麦を食べない母も、

「おいしいわ。」

と言いながらズルズル音を立てて食べます。父は僕のためにも「年越しうどん」を作ってくれるので、ぼくも、母達に負けないように

「うまいなあ。うどんってツルンツルンしていてのど越しが最高すぎるなあ。おいしいなあ。」

と大きい声でアピールしながらうどんを食べます。

 たまに父の作るおそばの味ってどんな味なんだろう、食べてみたいなと思いますが、今はまだ食べられないので、家族や友人などが言っていた

「おいしいよ。」

「こしがあっておいしいよ。」

など感想から想像したり夢で食べたりします。いつか父の作ったお蕎麦をおなかいっぱい食べられる日が来る事をいつでも願っています。

INFORMATION

第16回 小学校高学年の部(作文)優秀賞
「父の作る地球一の年越し蕎麦」
渡邊 敬藏(わたなべ けいぞう)さん(東京都・9歳) 青山学院初等部4年
※年齢は応募時

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