
Readings
-よみもの-
第16回 小学校高学年の部(作文)読売新聞社賞
干し柿からの贈りもの
私の家では毎年寒くなったら干し柿づくりがはじまります。私が産まれる前からずっと続いています。干し柿を食べて大きくなりました。渋柿は、全国各地から仕入れます。あちこちの山や畑から柿と一緒に新鮮な空気がはこばれてきます。箱が届くと、どきどきしながら開けます。みんなで手分けし、柿をむいてヒモを通して柿の部屋に吊るします。みるみる部屋は朱色にそまり、良いにおいがただよいます。
毎日、雨や風、温度の様子をみて柿を見守ります。寒くてもつめたくても疲れていてもよろこんでお手伝いします。柿の種類は色々あります。妙丹柿は小さくてかわいいです。禅寺丸柿は大昔の柿で、法蓮坊柿は存在感があります。紅高瀬柿はあかくて美しい柿です。みんな味も形もちがいます。
夜になると柿たちは、月の光にてらされてゆらゆらゆれています。かべに柿の影がうつりいつものように柿たちのお国じまんがはじまります。楽しそうだなぁ。私も仲間に入りたいなぁ。
おいしいものをつくるための工夫は興味深いです。毎日、柿部屋をのぞいて渋がぬけるのをまだかな、まだかなとまち続けます。何ともいえない良い香りが部屋だけでなく家中に広がります。時間と愛情をかけて出来上がった柿はほっぺたがおちるほどおいしくて、みんなとびきりの笑顔になります。
今は簡単においしいものが手に入るけれど苦労して気持ちのこもった食べ物を作ることの大切さとおもしろさを感じています。初夏のころはまだ青くて小さい柿の実です。暑い夏が過ぎ秋風がふくころには、りっぱな朱色の柿に成長します。柿のへたはしっかりと枝にくっついていて折れたり落ちたりしません。私も柿を食べながら、大地にしっかり足をつけてたくましく生きていきたいです。
そして、今年はどんなかきと出会えるのか待ち遠しいです。
INFORMATION
「干し柿からの贈りもの」
中前 緑(なかまえ みどり)さん(大阪府・10歳) 豊中市立豊島小学校4年
※年齢は応募時
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