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-よみもの-

第7回 小学校低学年の部(作文)優秀賞

まんまるつくね

その日、学校からの帰り道で、とても悲しいことがありました。

ふざけあっていた男の子にぶつかられて、かさの骨がおれてしまったのです。かさはぬのもやぶれてしまい、骨からつたってきた雨がポタポタとたれてきました。これはお母さんとおそろいで買ったもので、私のお気に入りです。とつ然の出来事に声も出ませんでした。走りさっていく男の子たちの姿を見て、私のむねはくやしさと悲しさでいっぱいになりました。

家に帰り、お母さんの顔を見たとたんに、こらえていたなみだがあふれ出しました。

「ママ、ごめんなさい。おそろいのかさ、こわされちゃった。」

私が理由を話すと、お母さんは言いました。

「いいよ、そんなこと。また、おそろいを探しに行こうね。」

それでも私はあきらめがつかなくて、そのあともシクシクと泣いていました。

その夜のことです。

「ごはんよー。」

と、お母さんに呼ばれテーブルにつくと、そこには、私の大好物の手作りつくねバーグがありました。一口食べただけで、心がポッとあかるくなりました。なみだなんてどこかにふっとんで、どんどんどんどん食べました。甘くて香ばしい香りが、私の悲しみでいっぱいの心を、優しくつつんでくれました。なんだかすごく心がかるくなった気がして、元気がでました。まんまるのつくねが、私の心の穴をふさいでくれたようです。

INFORMATION

第7回 小学校低学年の部(作文)優秀賞
「まんまるつくね」
川上 真央 かわかみ まお さん(東京都・8歳)東京学芸大学附属世田谷小学校 3年生
※年齢は応募時

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