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-よみもの-

第7回 小学校低学年の部(作文)キッコーマン賞

2ピースのたび

2ピースかけたクリスマスケーキが、テーブルの上に登場した。まあるい顔が、ポカンと口を開けたような、へんな形。

クリスマスの前日。朝から、お母さんは大いそがし。オーブンの中では、あまいかおりたちが、もうパーティーを始めちゃっている。

スポンジに、シロップをしみこませて、フルーツをたくさんしきつめて。まっ白な、生クリームのドレスをきせてから、いちごのティアラは、私がのせた。

「出来た?」

「うん、できた。」

私は、かん成した丸いケーキのしゃしんを、一まいだけ、とっておいた。

「よし、夕方までに送れば、明日、一しょに食べられる。」

やっとかん成したケーキは、あっという間にナイフを入れられてしまった。お母さんは、タッパーをさかさにおくと、ふたの上に2ピースのケーキを向かい合わせにすわらせ、ようきの部分をケースみたいにそっとかぶせてから、ゆっくりと、はこのまん中に入れた。

たくさんのごちそうたちとぎゅうぎゅうづめにされて、2ピースは、たっ急便のトラックにのって、たんしんふにんのお父さんのマンションをめざして出発した。

北海道までは、電車で行くのかな?フェリーかな?おなかにつまったフルーツがおもすぎてよわないか、心ぱいだった。

「おい、しっかり立てよ。タッパーのかべにクリームがつくじゃないか。」

「すまん、すまん。頭のいちごがおもくてよ。」

おしゃべりが、聞こえてきそうな気がした。

「ついたよ。ケーキ、たおれてなかった。」

次の日。けいたいの画面に、お父さんとおさらにのった2ピースが、小さく見えた。くたびれて、クリームがシワシワだった。

お姉さんと一しょに、けいたいを持った。

「せーの。メリークリスマス。」

家族四人で食べたケーキは、あまかった。

INFORMATION

第7回 小学校低学年の部(作文)キッコーマン賞
「2ピースのたび」
山本 千陽 やまもと ちあき さん(秋田県・8歳)秋田大学教育文化学部附属小学校 2年生
※年齢は応募時

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