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-よみもの-

第8回 小学校高学年の部(作文)優秀賞

おにぎりの忘れ物

母は仕事に行くとき、時々おにぎりを作る。そのおにぎりを、母は家に忘れていく。忘れていかない日はないほど、おにぎりを忘れていく。そのため、ぼくや弟たちで食べてしまう。ある日、母に、「どうしておにぎりを忘れていくの」と聞くと、「え、そんなの作った?」と、作ったことすら忘れている。まあ、自分も忘れ物はするが、ここまで激しいとは、かなりヤバイと思った。でも、それを言った次の日も、母は日課のごとく作り始め、そしておにぎりを忘れていく。見ているだけで笑ってしまう光景だけど、自分もおにぎりを食べるのが日課になってしまっている。それでも、おにぎりはおいしいし「まあ、いいか。」と思う。

そんな毎日が続くと、こんなことも起きる。ある土曜日、おにぎりを昼ご飯にとっておいたところ、弟と取り合いになった。そこへ仕事を終えた母が帰ってきた。取り合いをしている私達を見て、母は「おにぎりぐらいで、けんかするな。」と衝撃的な言葉を言ったのだ。「いや、あんたが作って忘れていったおにぎりが原因だろう。」と言いたくなったが、そこはぐっとこらえて、弟にゆずってやった。

母は、仕事の忘れ物はほとんどないが、なぜかおにぎりだけは忘れていく。これは、ただの忘れ物なのか、母の優しさなのか、ぼくにはわからない。

「まあ、いいか。」

ぼくは、これでいつもすましている。今日もぼくはそう言って、明日のおにぎりを待っている。

INFORMATION

第8回 小学校高学年の部(作文)優秀賞
「おにぎりの忘れ物」
齊藤 吏玖 さいとう りく さん(山形県・12歳) 舟形町立舟形小学校 6年
※年齢は応募時

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