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-よみもの-
2020年度 共同通信社賞
半年がかりのお弁当
コロナ禍でずっと延期になっていた家庭科の調理実習が、ついにできるようになった。そこで、私は 1人でお弁当を作ってみることに挑戦した。それも、昨日社会の時間に収穫したばかりの米を使ったのだ。社会の先生は、「1粒の種もみは千粒になります。」とおっしゃった。私は10粒まいたのだから、1万粒は採れるはずだと思ったのだが、結局 100粒しか採れなかった。毎日お水をあげ、防鳥ネットまでかけて半年も頑張ったのに、これでは大飢饉だ。いつものお弁当の量には足りず、家の白米にまぜて炊くしかなかった。農家の人が半年ていねいに育てて下さったから、今日のお弁当を作ることができたのだ。
せめて梅干しくらいは自分で作ったものを使おうと思い、この夏に干して漬けておいたものを、初めて瓶から出した。大きすぎるとは思ったけれど、やはり自作のものはうれしい。
おかずは、先週、学校の調理実習で習ったばかりのものに挑戦してみた。あっという間にできるつもりが、思ったよりも時間がかかった。授業中は班の3人で協力して調理していたが、今日は1人で全部やるから大変だった。 ごはんを研ぐところから始めて、冷ましたたまご焼きをお弁当箱につめるまで、結局午前中いっぱいかかってしまった。母は毎朝こんなことを 15分でやっているのかと驚いた。前の晩に、ある程度は支度しておくとは言われたが、すごいことだと思った。
毎日学校から帰って、空のお弁当箱を台所に出す時、私は特に何も言ってこなかったことに気づいた。兄が毎日ていねいにお礼を言いながらお弁当箱を出していた意味がようやく分かった。 食べ物のありがたさ、農家の人への感謝の気持ち、そして毎朝作ってもらえるありがたさを今、かみしめている。

INFORMATION
2020年度 共同通信社賞
半年がかりのお弁当
小宮 ゆきゑ (国立学園小学校5年)
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