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-よみもの-

2022年度 共同通信社賞

ぼくは卵焼き職人

ぼくと妹が通っていた幼稚園は、週に三回お弁当の日があった。料理が好きではない母のお弁当はいつもワンパターンだった記憶がある。ぼくが小学校に入ると、弁当が必要なのは妹だけ。母の弁当はさらにやる気をなくし、ほぼ毎回ミートボールかウインナー、卵焼き、ブロッコリー、ミニトマトだった。色のバランスは良く、見た目は、悪くない。

ワンパターンな弁当については、ぼくも妹も不満はなかった。しかし妹には一つ問題があった。毎回卵焼きを残すのだ。

妹は卵焼きがきらいなわけではい。妹の好きな卵焼きは母が作るものよりも、もっともっと甘い味付けのものなのだ。ぼくはためしに作ってみることにした。卵にたくさんのさとうと少しの塩を入れた。巻き方はわからないからユーチューブで勉強した。初めてでもなんとなくうまく焼けた!!

何も言わずに妹の弁当に入れてみた。その日、帰ってきた妹が「ママ、今日の卵焼き甘くてすごくおいしかった。」と言っていたのが聞こえた。やった! うれしい! ぼくのうで前が認められたんだ。

「ぼくが焼いたんだよ。」と言うと、妹は、「そうなの?だからいつもよりおいしかったんだ!」と言ってくれた。それ以来、幼稚園の弁当の日は、ぼくは早起きして卵焼きを作った。

妹は卒園するまで残さず食べてくれた。

妹も小学生になったので、今はもうお弁当はいらない。卵焼きはたのまれて夜ご飯のおかずとして作ることがある。みんな、おいしいと言いながら食べてくれるのでうれしい。

卵焼き職人はこれからも続けていくつもりだ。

INFORMATION

2022年度 共同通信社賞
ぼくは卵焼き職人
藤井 雄大 (札幌市立平岸高台小学校4年)

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