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-よみもの-
2022年度 キッコーマン賞
お弁当の力(2022年度キッコーマン賞)
私が中一の頃、些細な事でお母さんと喧嘩をした。お母さんはいつも四時半に起床し私のお弁当を作ってくれていた。ある日、お母さんは寝坊をしてしまい私も家を出る時間が遅くなってしまった。私は早く学校に行きたかったので「学校遅れちゃうから早くしてくれない?」とつい強い口調で言ってしまった。お母さんは「ごめんね、ちょっと待ってね。」と何回も言い続けた。私は待つことができずお弁当を持たずに学校へ行った。
その日の昼、私がコンビニで買ったのを食べていると友達が来て「今日はお弁当じゃないの?」と言われたので「そうだよ、今日はお母さん仕事だから」と嘘をついた。
友達は「仕事の日はコンビニになるよね。私のお母さんも仕事の日は早起きしてお弁当作れないって言ってた。」と言った。私はいつも六時起きで起きる頃には既にテーブルにお弁当が置いてある。だからお母さんが何時に起きて何時に作り始めているのか今まで知らなかったのだ。
その日学校から帰宅し、恐る恐る何時にお弁当を作っているのか聞いてみた。お母さんは「いつも四時半、仕事の日は四時」と答えた。私は固まってしまった。まさかそんな朝早くから私のためにお弁当を作ってくれているとは思いもしなかった。
「今日のお弁当どうしたの?」と聞くと、「あれはお母さんのお朝ごはんにしたよ。」と少し涙ぐみながら言った。ここで私はお弁当のありがたみを知った。私は素直に謝るのが苦手だったので、どのようにしたら仲直りをすることができるのか考えた。そこで、私も四時に起きてお弁当をお母さんのために作ろうと考えた。しかし、当時料理は苦手で卵焼きも焦げていて見栄えも台無しになってしまった。落ちこみながら起きてきたお母さんにお弁当を差し出し「前はごめんね。」と初めて素直に謝ることができた。その時のお母さんは驚いた顔をし、おいしくないはずのお弁当を泣きながら食べ「おいしいよ、ありがとう」と言ってくれた。
お弁当は私達にとってはあたり前のものだ。しかしそのお弁当には人と人とを繋げる素晴らしい力がある。

INFORMATION
お弁当の力
大橋 美月(晃華学園中学校3年)
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