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-よみもの-

2023年度 全日本中学校技術・家庭科研究会賞

おばあちゃん孝行への第一歩~夏野菜を使ったあっさり栄養満点弁当!

私には、私のことをいつも気にかけ、可愛がってくれる大好きな祖母がいる。両親が仕事で忙しく、帰りが遅かった時は、まだ小さかった私を背負って家事をしていたそうだ。小さい頃は祖母の後をついて回り、私にとって、今でも、もう一人の母親のような存在である。その大切な祖母も、次第に体力が低下し、今年の夏は暑さで食欲も落ちたそうである。そこで、今までお世話になった恩返しに祖母にお弁当を作ることにした。

いざメニューを考えてみると、食欲が落ちているお年寄りの食欲をそそるメニューがなかなか思いつかない。そこで自分が食欲の無い時に食べたいものは何だろうかと考えてみた。思いついたのが、私の大好物のいしもち(テンジクダイ)の南蛮漬けである。体長 8センチ前後の小魚で、よく揚げることで骨まで食べられるので、骨粗鬆症予防の働きがあるカルシウムをしっかり摂ることができると考えた。そして酢の効果で塩分控えめにつながり、一石二鳥である。そのことを母に話すと、何と母も祖母が作るいしもちの南蛮漬けが大好物だそうである。祖母から母へ、母から私へ受け継がれていく大好物のメニュー。何だか不思議な感じがした。

早速、いしもちの南蛮漬けに挑戦。まずはいしもちの頭と内臓の除去作業から始まった。小魚だから簡単にできると思っていたが、頭と内臓を取る時に手に伝わる何ともいえない感触に驚いた。そして何より、いしもちの背びれが指に刺さって痛い。体は小さいのに鋭い背びれがあるのは、生きるための進化なのだろうかと考えながら、ひたすら作業に取り組んだ。魚が小さいだけであって、なかなか終わらない。なんと手間暇のかかる作業だろう。そして次は、軽く小麦粉をまぶして揚げる工程に進んだ。元々小さいにもかかわらず、揚げることでさらに縮んでしまい、一口にも満たない姿となってしまった。人参、ピーマン、玉ねぎを千切りにしていしもちと一緒に三杯酢に付け込んで一品目の完成。

他にも、サバ缶を生姜などで味付けしたおにぎりを主食として、ほうれん草とちりめんの炒め物やかぼちゃの煮物など、夏野菜たっぷりのあっさり栄養満点弁当の出来上がり。

祖母は「さあちゃんにお弁当を作ってもらえる日が来るなんて、嬉しいよ。」と美味しそうに全部食べてくれた。祖母の嬉しそうな顔を見て、おばあちゃん孝行ができてよかった、お弁当の力はすごいなと心から思った。

INFORMATION

2023年度 全日本中学校技術・家庭科研究会賞
おばあちゃん孝行への第一歩~夏野菜を使ったあっさり栄養満点弁当!~
加地 彩希子 (松山市立余土中学校3年)

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