Readings

-よみもの-

2023年度 共同通信社賞

弁当は絆の証

僕が小学三年生のとき、休日は両親は共働きでいなかったため、いつも祖母が昼食を届けにきてくれた。その昼食は、焼鮭や唐揚げ、炒飯など僕の好きなものばかりを栄養バランスを考えてつくってきてくれていた。

しかしある日、祖母の料理をおかしを食べすぎてしまっていたからという理由で大量に残してしまった。その日の祖母の悲しそうな顔は今でもはっきりと覚えている。そして僕は決意した。祖母にお詫びとして僕がつくった弁当をプレゼントすることを。

どういうものを弁当のなかに入れるのかは既に決まっていた。主食は白米の代わりに、祖母がよくつくってくれていた焼きそばにしようと考えた。おかずは、ウィンナーやミートボールなどのお弁当の定番を入れて、野菜は祖母の好物であるひじきや竹の子、オクラを入れた。

早速、調理にとりかかる。主食の焼きそばは、市販の麵とキャベツ、にんじんやウィンナーを買った。それらをフライパンで炒めてソースをかけるだけなので案外簡単だった。次におかずのミートボールは冷凍食品のものを使った。また、オクラと竹の子はスーパーで買ってきて、オクラはかつおぶしやぽん酢と和えて、竹の子は水煮にした。竹の子の水煮をつくるのは初めてだったけれど、レシピをしっかり見ながら調理したら上手くできたのでよかった。この弁当の最大の難問であるひじきの煮物は、色々なレシピを見比べて祖母の好みと最も合うものを選び丁寧につくった。そして果物は祖母が運動会のときにいつもお弁当に入れてくれるいちごとマスカットを入れた。大分時間がかかってしまったが、ようやく完成だ。

僕は完成した喜びが冷めない内に弁当を持って、祖母の家に行った。お昼ご飯時を少し過ぎてしまったが祖母はまだ昼食をすましていなかったのでよかった。僕は急かすように祖母に弁当をわたした。祖母は嬉しそうにその弁当を食べてくれた。そしてすぐに美味しいと言ってくれた。その言葉を聴いて嬉しいと思う半面、申し訳ないという気持ちが急にこみ上げてきた。

「残しちゃってごめんね。」

僕は涙をこらえて謝った。祖母は優しく微笑んで、僕のことを許すどころか何度も何度も褒めてくれた。

僕のつくった焼きそば弁当は祖母との絆の証だ。

INFORMATION

2023年度 共同通信社賞
弁当は絆の証
堀江 真広 (町田市立真光寺中学校3年)

他の作品を読む

これも好きかも

共有

XLINE
おいしい記憶