
Readings
-よみもの-
2020年度 特別賞
大切な日に
今日は妹の通っている塾で模試が開かれます。妹は今年で10歳になったばかりの小学4年生です。私の妹は私と正反対で、真面目で優しい性格をしています。去年、私の中学受験のときに、気を使って勉強の邪魔にならないように静かにしていてくれたり、「お疲れ様。がんばってね。」とはげましてくれたりしました。そんな妹が、今日、模試を受けます。
皆さんにとっては、とても小さく思えるかもしれませんが、妹にとっては、私の受験のときと同じくらい大切な一日です。今まで、今日のために勉強をしてきた真面目な妹に、私は尊敬の気持ちを抱きました。それと同時に、私が受けた妹からの優しさへの感謝を伝えたいとも思いました。
しかし、その思いの伝え方がわからず、今まで私がされて嬉しかったことを思い出してみることにしました。そして、一番最初に頭に浮かんだことは、母から作ってもらったお弁当です。そのお弁当は、小学校の運動会で作ってもらったものでした。私のリレーは昼食を食べた後の予定で、とても緊張していました。しかし、お弁当箱の蓋を開けると、今までの緊張が飛んでいってしまうかのような「ファイト、君ならできる。」の文字が、のりで包まれたおにぎりのラップに書いてあったのです。 そのお弁当を食べた後は、とても勇気がわいてきて、1位を取ることができました。あのときはすごく嬉しかったのを覚えています。
その思い出を思い出し、気持ちを伝えるにはこの方法しかないと考えました。私はさっそく準備を始めました。メニューは、妹の好きなホットケーキと、ピーマンの炒め物、卵焼き、トマト、そしてデザートのゼリーです。今の時期はお弁当が傷みやすいと母から聞いたので、フルーツを避けたり、健康のことも考えて、ホットケーキには、おからパウダーを混ぜるなどの工夫をしました。初めて作ったため、少し時間はかかりましたが、食品の一つ一つに妹への感謝の気持ちが入っている証拠だと思います。入れるものは作り終わりました。そして、忘れてはいけない最後の一手間。つまようじにつけたマスキングテープに、あのときと同じ、ファイトの文字を書き、卵焼きに刺して完成です。妹は喜んでくれるだろうか。私の大切な
日の支えになれるだろうか。そう、妹の顔を思い浮かべて、わくわくしながらお弁当の入った袋を閉じました。
妹が帰ってきました。そして真っ先に私の所に来て、「ありがとう。めっちゃおいしかった。」と満面の笑みで言ってきました。その一言が私はとても嬉しかったです。
私が作ったお弁当で、しっかりと妹に気持ちを伝えることができました。今回のような誰かの大切な日に、皆さんは何をしますか。
私はお弁当を作ります。この言葉を供えて。
「ファイト。」

INFORMATION
大切な日に
佐藤 美七海(仙台市立仙台青陵中等教育学校1年)
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