
Readings
-よみもの-
2020年度 特別賞
転校と弁当の日
4月、私は吉田北中学校に転入した。玄関に入ると、掲示板に一人ひとりの弁当を持った写真と、自分で描いたイラストが展示されていた。「本当にこれ、自分で作ってるの?」と驚いた。イラストの横に、作る上で気をつけたところや、工夫したところが書いてある。ということは、どうやらみんな、本当に自分が作っているらしい。料理は好きだが、弁当を作ったことのない私は、正直、不安になった。
弁当の日の前に、事前学習が2回あった。今回で5回目になる同級生は、献立を立てるのも余裕そうで楽しそうだった。吉田北中学校の弁当の日には、3つのルールがある。「自分で作る」「500円以内で作る」「旬の食材を取り入れる」これを守れば、自分の好きなように作ることができる。そこで私は、自分の好きなものと、普通はあまり食べないようなものをミックスした弁当を作ることにした。名付けて「mix 弁当」
初めての弁当作りだったので、前の夜に作ることにした。ネットでレシピを見ながら、肉じゃが作りに取り掛かった。うまくできたと思い、母に味見してもらうと、「じゃがいもに芯が残っているよ。」と言われ、母のアドバイスで、レンジにかけた。フルーツミックスは、ひと手間かけようと、ざくろ酢に一晩漬けた。
当日は6時に起き、炒り卵と肉のそぼろ作りに取り掛かった。肉そぼろの味が濃いので、炒り卵には、あえて味をつけなかった。弁当を作りながら、「3年生なのに、料理の経験がないのかな?」と思われたくないなとぼんやり考えていた。
いよいよ弁当の日が始まった。新型コロナウイルスの影響で、学年ごとに移動し、みんなのお弁当を鑑賞した。すると、いろんな人から「さくらちゃんのお弁当、とても美味しそうだよ。」「これどうやって作ったの?」など声をかけられた。それから会話が弾み、今まで話すことがなかった下級生とも話すことができた。私は、とても嬉しかった。転入してきて、これまでになかった行事を経験し、また一つ自信をつけることができた。不安は、実際に行動することで解消されていくのだ。
今、生徒玄関には、私の弁当の写真と、レシピが書かれた「弁当の日新聞」が貼られている。

INFORMATION
母とつくったおべんとう
尾股 心菜(磐梯町立磐梯第一小学校5年)
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