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-よみもの-

2020年度 佳作

弁当がつくるもの

 私は家事が得意ではない。料理も食器洗いも段取りよくできないし、何より作業が雑なのだ。
 そんな私だが、毎日弁当を作っている。きっかけは、今まで弁当を作ってくれていた母のインフルエンザ。1週間だけ、と思って始めた弁当作りだったが、意外にも楽しくて、毎日自分で作るようになった。初めは手の込んだ弁当を作っていたが、最近は面倒くさがりな性格と雑な性格がやる気に勝り、冷凍食品を多く使った弁当が多くなってしまった。「食器洗いが面倒」「朝起きるのがつらい」などといった思いが、私の弁当を簡素化させた。それは弁当の日でも同じだった。みんな、前日から仕込みをしたり、手の込んだ料理を作ったりしている中、私の弁当は電子レンジでチンしたものばかり。私は少し恥ずかしくなった。「毎日弁当作っていて偉いね。」と何度もほめられたが、私にその資格はあったのだろうか。だから、次の弁当の日には、冷凍食品を使わずに、今までよりも手の込んだ弁当を作ろう、そう心に決めた。
 こうして挑んだ今年の弁当の日。テーマは「コロナに負けない栄養ある弁当」。私が考えたメニューは、ハンバーグ、ポテトサラダ、その他野菜などのお弁当の定番だ。これらの料理を前日の夜ご飯として作り、弁当の分をとっておくという方法で弁当を作った。そして、私にはもう1つの目標があった。それは誰にも頼らずに作ること。いつも料理をするときは誰かに聞いたり、手伝ってもらったりしていた。だから、1人で料理を作り上げ、家族に成長した姿を見せたいと思った。
 いよいよ弁当づくりが始まった。私は効率よく作業を進めることに集中した。じゃがいもを温めている最中にハンバーグの下ごしらえをするなど、頭を使いながらの作業は大変だった。意外にも時間がかかってしまったのは、じゃがいもの皮むきだ。包丁をうまく動かさないと食べられる部分が大幅にけずられてしまう。いつもは雑な私だが、丁寧に皮をむいた。丁寧な作業のおかげで、ポテトサラダはとても美味しくできた。一方ハンバーグも、火加減に注意して焼き、ふっくらとしたハンバーグができた。つまようじを刺すと、肉汁があふれ出た。人生で初めてのハンバーグ作りだったが、我ながら最高の出来だったと思う。
 私が作った料理を、家族は「おいしい」と言って食べてくれた。とても嬉しかった。この喜びを忘れないでいたい。
 振り返ると、弁当作り及びご飯作りはとても大変だった。毎日私のためにご飯をつくってくれる家族には感謝しかない。大変だが、その分の喜びは大きいのが弁当作りだと思う。だからこそ、これからも弁当を作り続けたい。自分のためだけでなく、人に喜びを与えられるような弁当を。

INFORMATION

2020年度 佳作
弁当がつくるもの
奈良 風花(青森県立三本木高等学校附属中学校3年)

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