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-よみもの-

2021年度 特別賞

一人ぼっちの弁当の日

 「今日のお弁当、誰が作った?」
 四時間目が終わった後、ぼくは友達に聞いてまわりました。みんな当然のように、「お母さんだよ」という答え。なぜなら、今日はぼく一人の『弁当の日』だったからです。
 その日は、区の六年生が集まる陸上大会で、みんなで食べるお弁当は、二年ぶりでした。コロナのせいで、運動会もお弁当なし、遠足も学校に帰ってからの給食、みんなでお弁当を食べることができなくなっていました。
 今回の陸上大会では、久しぶりのお弁当だったから、ぼくは姉がしているように、一人で作る『弁当の日』をしようと決めました。青空の下で食べることを予想して、メニューを考えていましたが、残念なことに雨予報で前日に大会中止のお知らせが届きました。でも、ぼくは『弁当の日』を決行しました。
 前日に買い出しに行き、夜のうちにお米を研いで炊飯器の予約をし、当日の朝はいつもより早く起きてお弁当を作りました。
 母がクラスの何人かのお母さんに、『弁当の日』を誘ったようだったので、ぼく以外にも誰か作ってくる人がいるかな?と期待したけれど、おにぎりを手伝った友達が一人いただけで、自分でお弁当を作ってきたのはぼく一人だけでした。ちょっと寂しいような、でも誇らしい気持ちでした。
 みんなのお弁当は、おにぎりに顔が付いていて、カラフルできれいだったけれど、ぼくが自分でにぎった昆布の丸いおにぎりは、すごくおいしかったです。
 弁当を作ったこと以外でみんなに驚かれた事は、デザートの丸ごとの柿でした。
 「自分でお弁当を作ったら、自分の好きな量だけ入れられるんだよ。」と、説明しました。
 今回は一人ぼっちの『弁当の日』でしたが、今度はみんなで弁当を持ってきて、見せ合いたいです。それが、本当の『弁当の日』だからです。

INFORMATION

2021年度 特別賞
一人ぼっちの弁当の日
辻野 柳カミル(江戸川区立上小岩第二小学校6年)

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