
Readings
-よみもの-
2021年度 特別賞
幻の焼きおにぎり弁当
今回弁当の日に取り組もうと思った時に、真っ先に思い浮かんだメニューが「焼きおにぎり」だ。今はもう食べることが出来ない祖母の焼きおにぎり。そこで祖母の懐かしいあの味を再現したいと思った。
僕の祖母は夏休みに遊びに行くと、よく焼きおにぎりを作ってくれた。いとこたちと外で遊んだ後のおやつの時間に、スイカやトウモロコシと一緒に準備していてくれるのだ。祖母が手渡す焼きおにぎりは、甘い味噌がたっぷりぬってあって、いくつでも食べられるおいしさだった。
しかし、祖母は一年前に亡くなり、今はもう会うことができなくなってしまった。コロナでなかなか行き来が出来ない時期での出来事だった。
だから真夏の八月の今日、ふと懐かしいあの味を再現してみたくなった。僕にとって祖母の焼きおにぎりは、いとこ達とにぎやかに過ごしたあの夏の思い出を意味する。焼きおにぎりを作る事は、祖母との思い出を温めなおすことにもなるのだ。
三角に固めたご飯に味噌をぬって、グリルで焼いたら完成だ。出来たおにぎりはそっと気を付けてお弁当箱に入れた。グリルから取り出すときにはしをさしてしまって、危うく割れそうになったからだ。下には彩りでしそをしいて入れた。合わせるおかずは、肉巻きのネギと、人参の炒め物。それから、母に味つけ卵の作り方を聞いてそれを入れた。祖母を思って作った弁当は、なんだか祖母の食卓みたいなメニューになった。
ところが、食べてみると僕の作った焼きおにぎりは祖母の味とは全く別の物だった。味噌は想像していたよりもずっと塩辛く、なにより一番の特徴のパリパリした食感が全然感じられない。私はもっと祖母の味に近づけるためにまた挑戦しようと思った。
今は祖母が作ったおにぎりは食べることができない幻の味になってしまった。けれど、今でも祖母のことを思い出せばあの甘辛い味噌の味が口に広がる。きっと、ずっと忘れないに違いない。そして、これからも祖母の味を追い求めて焼きおにぎりを作り続けようと思う。

INFORMATION
幻の焼きおにぎり弁当
栗田 遼人(仙台市立仙台青陵中等教育学校1年)
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