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-よみもの-
2021年度 特別賞
父ちゃん、鶏の炊き込みご飯だよ
父ちゃんの好物は、鶏の炊き込みご飯だ。炊き立ても好きだけど、おにぎりが最高だと言う。海苔を巻いて食べるのがいいらしい。子供の頃に父ちゃんは、鶏の炊き込みご飯のおにぎりをよく食べたので、一口かじると懐かしい思い出が蘇ると言う。
私も小さな頃から、鶏の炊き込みご飯が大好きだ。特に香ばしいおこげは最高だ。鶏の炊き込みご飯は、そのまま食べても、おにぎりにしても美味しい。普段はゴボウが嫌いだけど、鶏の炊き込みご飯の時だけは別だ。ゴボウがうまい。鶏肉の脂と、ゴボウのえぐみの組み合わせが堪らない。
中学生になって、父ちゃんの誕生日に何かしてあげようと思った。何がいいか聞いてみると、「鶏の炊き込みご飯を作ってくれよ。」と言う。「わかった。最高の鶏の炊き込みご飯を作るよ。まかせて。」と伝えた。
うちでは、鶏の炊き込みご飯を作るのは、父ちゃんの担当だ。こだわりがいろいろあるらしい。父ちゃんが鶏の炊き込みご飯を作るのを幼い頃からそばで眺め、少しは手伝ったこともあったが、自分一人で作ったことはなかった。父ちゃんにレシピを教えてもらって、スーパーに食材を買いに行った。必要な食材を売り場で一人で探してみて、いろいろな食材を使うんだなど思った。
帰宅して下ごしらえを始めてみると、結構面倒くさいことを知った。包丁を使い慣れていないので、危うく指を切りそうにもなった。美味しいものを作るには、手間がかかるんだなと感じた。具材を切り揃え、よく炒めてから煮込んで冷まし、炊飯器にセットする頃にはヘトヘトになっていた。
しばらくすると、食欲をそそる香りが漂ってきた。父ちゃんは「これは期待できそうだな。」と言ってくれた。炊飯が終わり、炊飯器の蓋を開けると、琥珀色の炊き込みご飯がお釡の縁まで盛り上がっていた。表面には艶々した鶏肉がごろごろしている。成功だった。父ちゃんは「うまい、うまい。」と言って嬉しそうに食べてくれた。ママも「美味しいね。」と褒めてくれた。結構大変だったけど、作って良かったと思った。
「明日の朝は、これをおにぎりにしてくれよ。」と父ちゃんがいうので、早く起きておにぎりを作った。鶏肉の脂でうまく握れなかったけれど、海苔を重ねて巻いて何とか形にした。父ちゃんは「うまい、うまい。最高だよ。」と言って食べてくれた。

INFORMATION
父ちゃん、鶏の炊き込みご飯だよ
前岡 里奈(町田市立薬師中学校2年)
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