
Readings
-よみもの-
2021年度 特別賞
私のみそ汁
私が五歳のとき、「はなちゃんのみそ汁」という映画を見ました。ガンで治療しているお母さんが、その頃の私と同じくらいの娘に、一人で生きて行けるように、色々なことを厳しく教えるという内容です。
そこで私のお母さんも、私にみそ汁の作り方を教えようと思ったそうです。
みそ汁の材料を一緒に買いに行き、いりこを選んでいたのをなんとなく覚えています。
最初の頃は、お母さんに教えてもらいながら、一緒に作りました。いりこの頭と腹わたを取り、いりこの出汁を作るところから始めます。いりこは、妹達と何個もつまみ食いをしていました。
みそ汁の具を切るときに、初めて包丁を使いました。小さな果物ナイフで、豆腐がくずれないように、手の上で切ったことは、今でもはっきり覚えています。
何度かお母さんと一緒に作ってみてから、ある時「一人で作ってみて!」と言われました。できるかとても不安だったけど、頑張ってみようと思いました。
いりこの準備から、具を切るのも、全部思い出しながら、そしてドキドキしながら一人で最後まで作りました。完成した時には、お母さんからほめてもらい、家族みんなが美味しいと食べてくれました。今となっては、その時の味ははっきり覚えていないですが、きっととても美味しかったんだと思います。
大きくなってから、小学校に行き、習い事をやり始め、すっかりみそ汁を作ることがなくなってしまいました。そんな時、コロナで緊急事態宣言が発令され、部活ができなくなるという状況になり時間ができたので、久しぶりに作ってみようと思いました。
今回はみそ汁だけでなく、ご飯を炊いたり、おかずも全て挑戦してみました。もしかするとあの頃の私の方が、包丁の使い方は上手だったかもしれません。
ただ、あの頃と違うことは、毎日献立を考えて作ってもらえることが、とてもありがたいんだと感じれるようになったことです。栄養のバランスや、見た目、家族の好みなどを考えて作ることがとても大変なんだと、一週間ほど夕飯作りをしてみて、感じることが出来ました。
今では部活も再開して、ご飯を作る時間はなかなかありませんが、あの頃の私に負けないようにまた作ってみようと思います。

INFORMATION
私のみそ汁
佐々木 蒼(春日市立春日西中学校2年)
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