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-よみもの-

2021年度 特別賞

たくさんのおかず

 私は安東先生の授業や映画を見て、小学生の頃の出来事を思い出しました。小学生の私は毎日昼に給食ではなく母が朝早く起きて作ってくれたお弁当を食べていました。しかし、その日は母がランドセルにお弁当を入れるのを忘れたようで、お腹が空いて困った私は友達に相談したところ、友達が当然のように、「なら、私のおかずあげるよ。」と言ってくれました。やがて、その話がクラス中に広まり、クラスメート全員が、プチトマト、玉子焼き、小さめのハンバーグなどのおかずを分けてくれました。クラスの人数が三十六人だったため、いつものお弁当の量を超えるほどでした。どのおかずもとても美味しかったのですが、おかずの一つ一つが少し違う味がして、不思議に思ったのを覚えています。その後、帰宅すると真っ先に母が「お昼どうしたの?」と尋ねてきました。私が、みんなから少しずつ分けてもらったことを伝えると、母は驚いて何かお礼をしたほうが良いと私に提案しました。私は少し考え、母に明日のお弁当を私も一緒に作りたい、と言いました。母は少し考えこみ、私の意図が分かったのか笑顔で「いいよ、美味しいの作ろうね。」とうなずいてくれました。
 次の日、午前四時頃母が私を起こしてきました。いつもなら、六時に起きる私は、こんな朝早くから作ってくれているのか、と思いました。母は家族の中で誰よりも遅くに寝て誰よりも早く起きています。この時私は改めて感心しました。初めてのお弁当作りはまだ小学生だった私にはとても難しく、母に包丁の持ち方違う!、火に近付きすぎないで!と注意されてばかりでした。やっと完成したお弁当は心なしかいつもより少し歪んでいたけれど、このお弁当は自分が作ったことがとても嬉しくて、誇らしく思いました。
 昼食の時に、私はクラスの皆にお礼を言い、おかずを分け与えました。そのおかずは私が作ったものだ、とみんなに伝えると、料理できるなんてすごい!とほめてくれました。その頃から私は料理することに興味がわき、練習し続け、今はお弁当を自分で作れるようになりました。授業中に見た映画は私の思い出と内容がよく似ていて温かい気持ちになりました。

INFORMATION

2021年度 特別賞
たくさんのおかず
織田 すみれ(晃華学園中学校3年)

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