
Readings
-よみもの-
2022年度 特別賞
食と人とのつながり
小学校のときから、運動会など特別な行事のときはいつも弁当を持参していた。母が私に持たせてくれた弁当は、冷凍食品が大半で冷たかった。給食の時間に友達の弁当をのぞくと、キャラクター弁当や見た目が可愛い弁当で正直羨ましかった。
ある日私は、母に思い切って「全部手作りにしてよ。友達の弁当は可愛くて、美味しそうなのに。」と言ってしまった。私の言葉を聴いて母は静かに怒りながら、「朝の時間がない間につくってるのに、何その態度。そんなこというならもう弁当つくらないよ。」と言った。当時の私は、弁当をつくる大変さがわからなかったので、申し訳なさより何故母があんなに怒っていたのか理解ができないままだった。
中学一年生になって家庭科の授業で、弁当を自分でつくる「お弁当の日」があった。小学校の頃は料理をしてこなかったため、何からしたらいいかすら分からなかった。先生の話を聞きながら、手順を考え、何を作るか一から考えた。それだけで私の脳はパンクしそうだった。お弁当の日の朝になった。結構遅めに起きてしまったので、母に手伝ってもらいながらつくった。登校時間ギリギリに完成して、冷凍食品も多めの弁当になった。
初めての弁当作りを通して気付いたことがある。それは弁当に込められた思いだ。私の母は時間がない中でも、私のために栄養価が高い野菜などをたくさん詰めてくれた。初めての弁当づくりでそのことがわかった。今まで冷たいと思っていた弁当も母の愛情の込もった温かい弁当だったのだと気づくことができた。
中学一年生の経験から、中学二年生、三年生では、普段から料理をするようになった。最近ではカレーライスを作った。食べてくれる人のことを考えながら隠し味などを入れてつくった。手が空いているときは食器を片付けるようにしている。これは家庭科の授業で学んだことだ。完成したので、ご飯と一緒に盛り付けた。母が一口食べると、「すごく美味しい。」と言ってくれた。それに続いて父も食べる。すると「うん。美味しい。毎日食べたい。」と言ってくれた。家族のその言葉がとても嬉しかった。そういうさりげない言葉でもつくった側からしたらとても良い気分になる。だから私も食前、食後には大きな声で「いただきます。」「ごちそうさま。」を言って感謝を伝えている。お弁当の日を通して食の大切さとありがたみに気づくことができた。なのでたまには母に面と向かって「忙しい中美味しいご飯をつくってくれてありがとう。」と伝えてみようか。照れ臭いけど。

INFORMATION
食と人とのつながり
鈴木 万葉(大仙市立仙北中学校3年)
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