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-よみもの-

2023年度 特別賞

お弁当で恩返し

 「浩平、できたよ。はい、浩平の分。」
 ぼくがようちえんのころです。三人の姉は協力し合って「お弁当の日」のお弁当を完成させていました。ぼくはおかずの味見係です。姉が作るおかずができるのを台所で、今か今かと楽しみに待ちます。
 「浩平、できたよ。」
 と言われたら、すぐに味見です。どのおかずの味見もうれしくて、味までは正直覚えてないけど、おいしかったと思います。ぼくは姉たちの「お弁当の日」が楽しみでした。そしてその日のようちえんのお弁当は、姉たちが作ってくれたおかずがいっぱい入っていました。
 ぼくは小学生になり、姉たちは全員中学生以上になりました。ぼくも姉たちのように料理がうまくなりたかったので、夕食の手伝いは、ついだり、並べたりする仕事よりもおかず作りをさせてもらうようにしました。そして「お弁当の日」は自分で作るようにしました。
 ぼくの「お弁当の日」。高校生の姉がねぼう。お弁当を作っていたら学校にちこくするので、「今日は作らない、なんか買う。」
 と言ったのですが、ぼくは朝ごはんの分まで多くおかずを作っていたので、その分をお弁当箱に詰めてあげました。ようちえんの時、ぼくのお弁当の分も作ってくれたので、その恩返しです。そしたら姉は喜んで
 「ありがとう、浩平。」と言ってくれました。学校から帰っても
 「浩平、おいしかったよ。浩平は料理上手やね。自まんの弟だよ。」
 と言ってくれました。ぼくはその時は本当にうれしかったです。ぼくも姉に
 「ようちえんの時作ってくれたお返しだよ。お姉ちゃんも自まんのお姉ちゃんだよ。」
 と伝えました。
 今でもぼくが「お弁当の日」は、姉の分も作っています。ようちえんのころの、おかずができるワクワクの時間の恩返しができているようでうれしいです。

INFORMATION

2023年度 特別賞
お弁当で恩返し
上田 浩平(宇美町立井野小学校5年)

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