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-よみもの-

2023年度 特別賞

料理の楽しさ

 料理は正直なところ苦手です。難しい工程も多いし、具材を切ったり、調味料を入れたり、火を通したりと、とにかく大変で、集中力がいるからです。僕の父は、仕事帰りで疲れているにもかかわらず、毎日晩ごはんを作ってくれます。父はどんなに疲れていても、僕たち兄妹のために料理を作ることを「楽しい」と言って、僕たちが「おいしかった」というと、「明日は何食べたい?」と嬉しそうに聞いてくるのです。ある日、学校から「お弁当を作ろう」という宿題が出されました。料理が好きではない僕は正直、難しそうだな、とか、大変そうだな、としか思っていませんでした。僕はお父さんのように料理を楽しめそうにないな、どうしてお父さんはあんなに料理が楽しそうなんだろうな、その時はそう思っていました。
家に帰ってから、重たい体を起こし、僕は家族のための弁当のレシピを考え始めました。しかしここで、予想外のことが起こります。「主菜はこれがいいかな?」「野菜はニラを入れてバランスを取ろう」そう考えているうちに、なんだか楽しくなったきて、早く弁当を作りたいなと思うようになってきたのです。今まで料理を作るとき、こんな気持ちになったことはなく、自分の変化に内心驚いていました。その勢いで、僕は弁当作りに臨みました。慣れない手つきで主菜となるハンバーグや、炊き込みご飯などを作り始めました。予想以上に時間がかかり、予定よりも三十分時間を超えてしまいましたが、その分達成感と楽しい気持ちに満ちていました。早速家族に食べてもらうと、父は「おいしい!」「この料理の作り方教えてよ」と、僕の弁当を褒めてくれて、とてもおいしそうに食べてくれました。この時、僕は父の気持ちがわかった気がしました。食べてくれる人においしいと言ってもらうことが、どれほど嬉しいのか、それに気付くことができました。きっと、こんなにも弁当作りを楽しめたのは、誰かのために作ろうと思い、そのために全力を尽くすことができたからだと思います。弁当は、中の料理を作るだけではなく、見栄えや料理の配置を考え、食べる人が蓋を開けた時に、料理を口に運んだ時に、笑顔になるように、そのために弁当を作るから、どんな料理よりも思いがこもるし、どんな料理よりもおいしく感じるのだと思います。きっと父も僕たちが喜ぶ姿を想像しながら、毎晩料理を作ってくれているのだなと思います。これからは、父の作る晩ごはんに、より一層感謝し、「おいしい!」という気持ちをもっと伝えていこうと思います。

INFORMATION

2023年度 特別賞
料理の楽しさ
神谷 蓮(大府市立大府西中学校3年)

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