
Readings
-よみもの-
2023年度 特別賞
家族が繋がるお弁当
ある日の夜中、僕と妹は大雨の音で目が覚めた。すると台所の中から物音がしている。見に行くと、母が父のお弁当を作っていた。今から父が仕事に行く事になったので朝御飯用のお弁当が必要になったのだ。
ここ数日、僕の住む地域は断続的に雨が降っていて、いつ災害が起きてもおかしくない状況であった。僕の父は、医療、介護の現場で働いているが、職場の裏には山があり、安全確認のため、職場に向かうという。
僕は毎日学校に、母の手作り弁当を持って行くのだが、母はいつも笑顔でお弁当を作っている。
「お弁当作り大変じゃない?」
と尋ねた事があるが、
「お弁当を食べている姿を想像しながら作ると幸せだよ。笑って作った方がおいしく出来るんだよ。」
という答えが返ってきた。しかしこの日、父の弁当を作る母は、とても真剣な顔だった。僕らもお弁当作りを手伝う事にした。僕は、父の好きな卵焼きと、きんぴらごぼうを作り妹はハムで「パパきをつけてね」という文字を型抜きし、いなりずしの上に乗せた。ただただ、父の無事を願いながらお弁当を作った。
父を見送った後、母から
「一緒に作ってくれて、心強かったよ。ありがとう。」
と言われ、嬉しいけれど複雑な気分だった。
その日の夜、空っぽのお弁当を持って、父が元気に帰宅した。
「みんなの気持ちが込もったお弁当を食べたら力がわいてきて、頑張れた。おいしかったよ。ありがとう。」
と父が言ってくれた。その言葉で家族全員ほっとした。
今回、父のお弁当作りをし、改めて母に感謝すると同時に、僕の元気の源は、母の愛情が込もったお弁当でもあると感じた。
あれから僕は、出来るだけ感謝の言葉を伝えるようにし、時々ではあるが自分でお弁当箱を洗っている。お弁当とは、離れた場所に居ても、家族のことを思い出し、家族の愛を感じることが出来るものだと思った。今度は僕がお弁当を作り、家族に元気を届けたいと思う。

INFORMATION
家族が繋がるお弁当
射手矢 優太(佐賀学園成穎中学校3年)
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