
Readings
-よみもの-
2024年度 全日本中学校技術・家庭科研究会賞
サンドイッチ
幼い頃から偏食が激しく、単純に味がだめなもの、見た目だけでアウトなもの、食べられないものだらけだった僕は、母から
「舌が敏感なのはすごいことなんだよ。悪いことじゃないんだよ。」
と言われて育った。また、食事は楽しむのが一番大事だという母の方針で、苦手なものを無理に食べさせられたことはなかった。
思い返してみると、冷たいご飯が食べられなかった幼稚園の頃、毎日の弁当は決まってサンドイッチだった。サンドイッチは嬉しかったが、おかずやデザートは、ほとんどが温度、見た目、匂いで食べられず、完食した記憶はない。毎日何なら食べてくれるのかと考え、作り、そして手つかずで戻ってくる弁当箱を、母が毎日どんな気持ちで洗って、そしてまた作ってくれていたのか、その時の僕には想像もできなかった。
偏食はわがまま、しつけがなっていない、調理の工夫が足りないせいと言われ、母が涙を流していたことも、夏休みの課題でこの作文に挑戦しようと思わなければ、一生知らないままだったかもしれない。
「母にサンドイッチを作ろう。」
ふとそう思った。
生野菜も冷たいハンバーグも卵も食べられなかった僕のサンドイッチは、いつもジャムやチョコレートがはさんであったが、今回は母に喜んでもらえるよう、家の畑で採れた野菜を使ってサンドイッチにしてみた。
「すごい。カフェみたい。」
と、母は予想の十倍喜んでくれた。本当は弁当箱に詰めようとして失敗したのだが、どうせならカフェっぽく盛り付けてみようという方向転換が成功して安心した。
母が教えてくれた通り、食事は楽しむことが一番。でも、残さず食べてもらえたら嬉しい。美味しいと言ってもらえたら嬉しい。残されたら悲しい。これは、誰かのために料理を作る経験をして初めて分かるものだった。
また作って欲しいと言われたので、今度は具材を変えて、弁当箱にも詰めてみよう。僕の好きだった甘いサンドイッチも作りたい。ハンバーグや卵、野菜たっぷりのサンドイッチも、今の僕なら食べられるから、今度は家族みんなの分も作って一緒に食べよう。

INFORMATION
サンドイッチ
髙橋太陽(気仙沼市立大谷中学校2年)
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