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-よみもの-

2025年度 特別賞

お弁当の魔法

 私のお弁当は、まるで小さな畑のようだ。ツヤツヤのトマト、甘い南瓜に人参の金平。どれも祖父が畑で育てた野菜だ。シンプルだけと、一口食べると心がホットする。お弁当には魔法があると思う。私は以前、ピーマンが苦手だった。ある日お弁当を開けると、細かく刻んだピーマン入りの卵焼きが入っていた。なるほど、そういうことか…。
 「今日もお弁当を残さず食べてきてね。」笑顔でそう言った母の言葉の意味が、その時やっと分かった。お弁当ならきっと一口ぐらいは食べるはず、母はそう考えていたのだろう。仕方ない、私は思い切ってピーマンと戦うことにした。食べてみると、意外と美味しくて、ビックリ。苦手でも、ちょっとした工夫で変わるのだと気付いたのもお弁当の時間だった。苦手なピーマンを食べることが出来元気になれた気がする。お弁当って、作る人の想いが届く魔法みたいだな、とも感じた。
 ある日、祖父が体調を崩し、畑に出られなくなった。祖父の代わりに家族で畑のお世話をしたが、思ったより大変で祖父のように立派な野菜は育たなかった。それでも小さなトマトが実った時は嬉しかった。
 しばらくたっても祖父の笑顔がなかなか戻らなかった。私はあの時のお弁当の魔法を思い出し、兄と一緒に祖父へお弁当を作ることにした。茄子の味噌炒め、茄子の皮は硬かったので、金平にした。胡瓜は薄く切ってツナと和え、卵焼きには母の真似をして、刻んだピーマンを入れた。おにぎりは、祖母お手製の梅干し入りだ。
 「この切り方でいいかな?塩辛いかな?。」普段は喧嘩ばかりの兄とも、この時は息ピッタリだった。最後に小さなトマトを添えて、家族の元気を詰めたお弁当が完成した。祖父は、「茄子やわらかいね、うまか。」と目を細めて笑ってくれた。胸の奥が温かくなるのが分かった。
 お弁当作りを通して私は食べる人のことを想う気持ちの大切さを学んだ。お弁当には作る人の優しさや願いが詰まっていて、それを食べた人の笑顔がまた、作る人の元気になる。お弁当の魔法は、きっとこれからも沢山の人を幸せにしてくれるだろう。

INFORMATION

2025年度 特別賞
お弁当の魔法
射手矢 咲子(佐賀県 佐賀市立城東中学校 1年 )

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