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-よみもの-
2025年度 特別賞
ありがとうを詰めたお弁当
うちには父と母と妹のほか、祖母も一緒に暮らしています。私は母と祖母どちらの作るご飯も大好きです。日々の食事も美味しいのですが、母が遠足に作ってくれるお弁当は、特別な楽しみがあります。
母と祖母は外食をするとよく「人の作ったご飯は美味しい」と言います。そこで、ある年の母の日、私は2 人にお弁当を作るプレゼントを思い付きました。
あまり凝ったものは作れないのでメニューは私の得意な物と簡単そうな物にしました。梅おにぎり、卵焼き、もやしと人参のナムル、ウインナーのケチャップ和え、ブロッコリーの炒め物で決まりです。
お米は時々やる手伝いとキャンプの飯ごう炊さんで慣れています。卵焼きは母直伝の、お出汁とマヨネーズ入り、ふわふわで食べるのも作るのも大好きです。
ここまでは順調でしたが、ナムルはごま油をサラダ油と間違え、ウインナーは焦がしてしまいました。妹と味見をして思わず「不味―い」と顔を見合わせ、落ち込みながらも作り直し。もう一度妹が味見をして「今度は美味しい」とグーサインを出してくれました。
ブロッコリーは妹が炒めたいと言い出したので任せてみたら手首があたり、「熱っ」と大泣き。見守ってくれていた父が保冷剤で冷やしてくれたので、大事には至りませんでしたが、火はやはり怖いと感じました。
おにぎりは妹も一緒に作ります。ラップで包み、形を整えて一緒に梅を入れて完成。あとは詰めるだけですが、これが意外と難しく母の詰め方の上手さを実感しました。
しばらくして母と祖母が帰宅しました。妹は玄関で「早く早く」とせかし、私はドキドキ。お弁当を見た2 人は驚き、「上手だね、きれい!」とほめてくれました。妹は得意顔でお弁当を勧めます。私は「妹はブロッコリーを炒めて、おにぎりを握っただけなのに」と、ちょっとイラっとしました。そんな私の気持ちも知らず二人はまず卵焼きを食べ、「私達のより美味しい!」と大絶賛。他のおかずもほめてくれました。
おにぎりを食べた時に母が「ん?」と。どうやら塩を忘れていたみたいです。しかし祖母が、「梅が酸っぱいからちょうどいい」とフォローしてくれて安堵しました。
少しの失敗があっても、心を込めて作れば気持ちは伝わります。そして喜びは自分にも返ってきます。
この日の「ありがとう」はとても嬉しかったのに、母と祖母が作る日々の食事は私にとっては当たり前になり、私は二人にありがとうを言えていなかったと気づきました。これからは、「毎日美味しいご飯を作ってくれてありがとう」の気持ちを込めて「いただきます」と「ごちそうさま」を言おうと思える、楽しい母の日になりました。
INFORMATION
ありがとうを詰めたお弁当
鈴木 愛莉(東京都 江東区立南砂中学校1年 )
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