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-よみもの-
2025年度 お弁当デリ賞
質問に込められた思い
「お弁当どうだった?」---- 母は、私にお弁当を作ってくれるたびに、決まってそう声を掛けてきた。小学生の時は、純粋に「すごくおいしかった。また食べたい。」と素直に答えていた。しかし、中学生になり、思春期の真っ只中の私は、この質問が少し煩わしく感じるようになった。
ある日、家庭科の授業で生姜焼きの作り方を習った。母にも食べてもらおうと思い、初めての弁当作りに挑戦してみた。しかし、私は料理が大の苦手で、レシピ通りに作ってみたが、お手本の写真と比べた時、見た目が全く違った。生姜焼きの他に、母がよく作ってくれるポテトサラダと卵焼きにも挑戦した。ポテトサラダは、ただジャガイモを潰して、色々な野菜を混ぜるだけだと思い、「これなら私でも出来る」と自信満々だった。実際は、潰したジャガイモの中に入れる野菜は、塩もみして、水分をしっかり絞る必要があったり、混ぜる時、全体の食感が悪くならないように、力加減を意識したりと、難しいところが多かった。
ご飯を炊いて、弁当に詰める作業をした。ふと、台所を見てみると、フライパンや炊飯器、調味料など、私が料理をしたあとが目についた。これから洗い物もしないといけないのかと思うと、唖然とした。台所に立って初めて、毎朝の母の忙しさと苦労を、少しだけ実感することができた。一時間程で終わるだろうと思っていた弁当作りも、気付けば二時間もかかっていた。私が作った弁当を母に渡すと、すごく喜んで仕事に向かった。私は、「まずくなかったかな。美味しかったかな。」と一日中心配した。
母が帰ってきた時、「お帰り」より先に、「弁当どうだった?」と声を掛けてしまった。この時、母が弁当を作ってくれるたびに私に聞いてきた質問の意味が解った。母も本当は心配していたのかと思った母が「美味しかったよ。」と言ってくれた時、心配が一気に消えて、私の顔もぱっと明るくなった。
いつも私に渡してくれていた母の笑顔を、今度は私が返せたような気がして、少し嬉しかった。母は、仕事もあるのに、朝早くに起きて、私の為に美味しいお弁当を毎回作ってくれていたのだなと思うと、改めて感謝した。これからは、「面倒くさい」などと思わず、母にしっかりと感謝の気持ちを伝えていきたいと思う。
INFORMATION
質問に込められた思い
里之園 果歩(鹿児島県 鹿児島市立伊敷中学校3年 )
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