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-よみもの-
「あなたのおいしい記憶」エッセー、作文コンテスト2017 作文部門最優秀賞
年に一度の特別な味
わたしは小学一年生まで、千葉県にある海の目の前の小学校に通っていました。いなかにある小さな小学校で、全校せいと数が三百人ほどでした。
その小学校のとなりにはようち園もあって、みんなようち園を卒園すると、そのままとなりの小学校に入学します。運動会もけんこうしんだんもひなん訓練もマラソン大会もみんなようち園児と一しょにやります。給食だって同じものです。
わたしは年に一度、ようち園児のころから楽しみにしていた給食がありました。それは、マラソン大会のときにお母さん達が作ってくれるとんじるです。
冬になるとマラソン大会があって、海岸を走ります。風はつめたくビュービューふいて、しお風で目はしみて、耳はいたくなりながら、曲がり道もなく、長く長く続く海岸をただただ走ります。苦しくて、寒くて、だけどそれが終われば温かいとんじるがついた給食です。
その日はレジャーシートを体育館に持っていき、全校せいとみんなで食べます。とんじるは自分のおわんを家から持ってきて、前にいるお母さん達によそってもらいます。一年生のころはそのおわんをみんなで見せ合ってよろこんでいました。
いつも食べている給食は給食センターから運ばれてくるため、温かく食べられません。だけどこの日のとんじるはあつあつで、できたてです。みんな一回はおかわりにならびます。
わたしはこれを食べたくてマラソンをがんばっていました。
わたしは今、転校して、さい玉の小学校に通っています。給食室があり、毎日ほかほかの給食を食べています。だけどマラソン後のお母さん達のとんじるはありません。全校せいと数が前の学校の三倍近くいるので、体育館に集まるだけでもせいいっぱいです。毎日ほかほかでうれしいけど、少しさびしいです。
今では給食にとんじるがでると、おいしくて特別なあの味と、一しょに遊んだみんなの笑顔が頭にうかびます。
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年に一度の特別な味
作・社員の家族
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