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-よみもの-

「あなたのおいしい記憶」エッセー、作文コンテスト2020 作文部門優秀賞

ばあばのエビフライ

「ママ、大丈夫だよ。」
小さな声でそう言った。夏休みに少しだけ、ばあば、じいじの家に一人で泊まることになった。あっという間に楽しみにしていた夕食の時間が来た。なぜ早く感じたかというと、ばあばの料理はとてもおいしいからだ。
初日の夕食は、エビフライ。エビフライは、元々特別好きなわけではないが、どんな料理よりもおいしく感じた。エビ本来の旨みをいかしながらサクサクに仕上げているからだ。少しずつ食べていたつもりだったのに気づいたらお皿は空になっていた。おいしさの秘密は、母に会えないさみしさと、一人で泊まる楽しみと、おいしさへの驚きなど色々な感情が混ざっていたからなのかと思っている。
それから、三年が経った。世の中はコロナ禍となり、自粛が呼びかけられ、県外のばあば、じいじの家にはいけなかった。悲しんでいると急に、三年前のエビフライを思い出した。あの日食べた思い出のエビフライより大きいものを食べたことはあったが、バアバの味を超すことはなかった。
あの時なぜエビフライにしたのかが気になったので聞いてみたら、ばあばは、
「それはね、真央ちゃんが喜んでくれると思ったからなの。あっ、それに真央ちゃんが絶賛してくれて嬉しかったから覚えているの。」と話してくれた。
おいしい料理を食べると人は喜び、笑顔になる。それはたとえ大きな飲食店でも、スーパーでも、家だとしても、お客さんに、家族に喜んでもらいたいという願いは変わらないのだ。
おいしい料理というのは、作る人や食べる人を笑顔にさせてくれるだけじゃない。楽しい思い出のように、毎年、何十年経っても忘れないものとなる。
そんな食ともっと関わり、食の面白さと楽しさを知っていきたい。
そして、今度は私が、ばあばにおいしい料理を作り、笑顔にさせたいです。

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「あなたのおいしい記憶」エッセー、作文コンテスト2020 作文部門優秀賞
ばあばのエビフライ
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